基礎生物学研究所(NIBB)、法政大学(法大)、東京大学の3者は6月17日、名古屋大学(名大)との共同研究により、分裂する際の植物細胞内仕切りが作られるその過程を高解像度で撮影することに成功したと共同で発表した。

成果は、NIBBの村田隆准教授、同・野中茂紀准教授、同・長谷部光泰教授、法大の佐野俊夫准教授、東大の馳澤盛一郎教授、名大の東山哲也教授、同・笹部美知子特任助教(現・弘前大学准教授)、同・町田泰則教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、6月17日付けで英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

動物の細胞は2つにちぎれて分裂するが、植物は1つの細胞の中に仕切りを作って分かれる。仕切りは、「微小管」という細い中空の繊維で編まれたゆりかごのような「隔膜形成体」の中で形成される仕組みだ(画像1)。細胞を2つに分けるため、ゆりかごは徐々に大きくなるが、その過程を理解するためには、ゆりかごの編み方を理解しなければならない。しかし、繊維が密集して存在するため、1本1本の繊維が編まれていく様子を見ることはこれまで不可能だった。

画像1。仕切りが育つ「ゆりかご」は微細な繊維で編まれている

そこで研究チームは、光の透過経路にシリコンオイルを用いた顕微鏡システムを開発し、顕微鏡観察の分解能を上げることに成功した。その結果、編まれていく途中の繊維1本1本の動きを撮影することに成功し(画像2)、繊維が編まれてゆりかごが大きくなる仕組みが判明したのである(画像3)。ゆりかごが大きくなることは細胞を仕切る原動力なので、植物細胞が分裂するための原動力が明らかになったことになるというわけだ。

画像2。編まれていく繊維1本1本の動きを高解像度の顕微鏡でとらえた

画像3。繊維を編んでゆりかごを大きくする仕組みが明らかになった

今回明らかにした仕組みはほとんどすべての植物で働いているため、植物の成長に関わるすべての基礎研究、例えば葉や実ができる仕組みの理解などに貢献することが期待されるという。また応用研究として、新しい除草剤の開発、果実や穀類の品質改良などにつながる可能性があるとしている。