名古屋のエビフライサンドって知ってる?

名古屋と言えばエビフライだ。そのルーツはかのタモリさんが「ナゴヤはエビフリャーばっかり食べてミャーミャーいっとる」と言ったことに端を発しているのは有名な話。そんな名古屋にエビフライを使ったすごいメニューがあると聞き、喫茶店「コンパル」へ実食取材を決行した!

「名物らしくゴージャスに!」老舗喫茶店が考案

「コンパル大須店」店長の山口篤さんが製造工程を教えてくれた

コンパルは名古屋市内に9店舗を構える名古屋ローカルの喫茶店チェーン。創業は昭和22年(1947)という老舗のお店だ。大須店店長の山口篤さんによると、名物「エビフライサンド」(890円)の誕生は昭和63年(1988)にさかのぼるという。

「名古屋の中心部にある栄西店が改装した時、リニューアル記念に何か名古屋オリジナルの商品を作ろうという話になったんです。それで生まれたのがこの『エビフライサンド』だったんですよ」とのこと。

先述のタモリ効果に加え、愛知県の県魚がクルマエビ。何よりエビフライは名古屋城の金のシャチホコを連想させる。パーフェクトな展開だった。とはいえ、ただエビフライをサンドイッチにするだけなら「ありがち」だ。

まずスタッフは、東京など他の都市に出かけリサーチを行った。結果、「エビカツサンドはあるけどエビフライサンドは意外と少ない」。そして「どうせ作るなら、名物らしく思いっきりゴージャスにしよう」と開発が進んだという。そのため、コンパルのエビフライサンドは名前こそシンプルだが、その実かなりの多層構造なのである。

名前はシンプルだがその実かなりの多層構造な「エビフライサンド」

「まず卵焼き。その上にオリジナルのカツソース。その上にエビフライが(大盤振る舞いの)3本。その上にレモン汁。その上にタルタルソース。その上にドレッシングであえたキャベツ。それをトーストで挟みます」。山口さんは指折りしながら工程を説明してくれた。

ちなみに、「エビフライは揚げるのに7分くらいかかるんですよ。その間にタイミングを見計らってトーストを焼き、卵焼きも作らないといけません。アツアツを食べていただきたいので、3つの作業をいかに同時進行するか。ここがポイントなんです」。実際に作る現場も見せてもらった。なるほど!! 実に手際が良い。

エビフライは揚げるのに7分前後かかるという

一本一本丁寧に揚げていく。細かな手作業だ

観光客のみならず、地元の人もリピートするサンド

完成したエビフライサンドをひょいと片手でつかんで食べようとするとうわわわ、ぼろっと崩れる! それを見ていた山口さんが、「崩れやすいでしょ? 両手で優しく持ってタテ方向で口に運んでください」と食べ方を伝授してくれた。なるほど。これならスムーズにおいしさを堪能できる。これがエビフライサンドの作法なのか。両手で優しく持ってパクリ。

エビフライはソースが絶妙に衣に染み渡ってさっくりしっとりしている。じゅわっとエビのうまみが口に飛び込んでくる。そこに卵の ふんわりした甘さとキャベツのしんなり感が段重ねにやってくるのだ。トーストならではの適度な香ばしさが食欲を更に刺激し、実に複雑な味わいだ。

思わず山口さんに「や、やっぱりテッパンなうまさですねぇ」と一言。後はひたすらモグモグと口を動かす。このエビフライサンドは、GWなどの繁忙期にもなるとガイドブック片手に観光客が集まり、1日100食以上も出るのだという。山口さんいわく「フライヤーの中でずっとエビフライが泳いでる」状態なんだそうだ。

ここで山口さんは、「うちでは色々なメニューを展開しているのですが、地元のお客様でもエビフライサンドしか食べない人もいるんですよ!」と語り始めた。コンパルのサンドイッチには固定ファンが多く、「エビフライサンドか、カツサンドか、ホットドッグか、ミックスサンドか。常連になるほど決まったメニューしか頼まない」というのだ。ここがただの名古屋名物じゃない強さと言えるだろう。コンパルはあくまで地元・名古屋密着の喫茶店なのである。

「コーチン玉子サンド」は600円。これも人気の一品

「アイスコーヒー」(380円)へのこだわりも半端じゃない

コンパルには他にも、名古屋コーチンの卵を3つぜいたくに使った「コーチン玉子サンド」(600円)や、エスプレッソ級の濃厚なホットコーヒーを氷で冷やして作る「アイスコーヒー」(380円)など、ありそうでなかなかない名物が人気を集めている。名古屋に行く機会があるなら、是非味わっていただきたい。

●information
コンパル大須店
名古屋市中区大須3-20-19