見るからに強烈で濃い印象の「高山ラーメン」(「まさごそば」の「並盛り」)

最近の麺料理のトレンドと言えばつけ麺だろうか。濃厚魚介スープがやみつきになるという人も多いだろう。そんな和風テイストの麺好きには是非とも食べていただきたい麺料理が、飛騨の小京都・高山にある。その名を「高山ラーメン」と言う。

グツグツと煮込まれた「中華そば」

この「高山ラーメン」、現地ではラーメンと呼ばれずに「中華そば」、更に簡略化されて、何と「そば」と呼ばれて親しまれているのだ。ジャンルは中華そばだが、いわゆる東京風の中華そばとは異なる。スープは同じ醤油味だが、具材はシンプルにネギとメンマとチャーシューだけ。しかし、それでも似て非なるモノなのだと断言できる。

高山ラーメンの始まりは戦前までさかのぼる。ある名うての料理人が夜に引いていた屋台の中華そば屋が始まりだというのが通説だ。

この高山ラーメン最大の個性、それはスープの作り方にある。普通ラーメンのスープは「元ダレ」を「ダシ」で割って作るものだ。しかし、高山ラーメンのスープは鶏ガラや野菜、魚介をベースにしたダシと醤油を直接合わせて、寸胴(ずんどう)に入れて、グツグツと煮込むのだ。

煮詰まったスープはオーソドックスな醤油ラーメンよりもはるかに黒っぽく、味も濃厚になる。一般的に冬の寒さが厳しい地方ほど、塩辛さや濃い味わいが好まれる傾向にある。高山ラーメンは、その典型なのではないだろうか。

タレをスープで割るのではなく、あわせて煮たものを麺にかけるのが高山流!

パーマのかかった弾力のある平麺

まずは食べてみないと始まらない。高山市を中心に、飛騨地方には全国に知られている12店舗だけではなく、多くの高山ラーメン専門店がある。しかし、どうせ食べるなら老舗がいい。というわけで、「まさごそば」に足を運んでみた。

ここはルーツの屋台を引いていた創始者が戦後に構えた店で、いわば元祖中の元祖とも言える店である。ほとんどの高山ラーメンの店に共通して言えることだが、メニュー構成はシンプルの極み。商品は醤油味の「中華そば」のみということ。

メニューは並盛り(700円)と大盛り(900円)、そしてご飯がある程度。これは、スープとタレが最初から一体化していて、他の味を作れないというのが理由だろう。

スープは醤油の味が濃厚で、塩辛さ一歩手前で踏ん張っているという印象。「煮込み」という工程がきいている味だ。麺は極細で平麺が主流。麺のコシよりもパーマならではの物理的な弾力が特徴と言える。

具材はシンプルな分だけ、一つひとつのインパクトが強い。とにかく濃厚なのだ。バラ肉を使ったチャーシューはトロットロ。味が良く染み込んでいる。メンマは大ぶりで程よい歯ごたえと、優しい味わいに安心させられる。

味が染み込んだトロットロのチャーシューが堪らない!

この手のラーメンはスープの味が濃い分、食べ続けると味が単調になるだけに、具材の果たす役割は大きい。ここで忘れてはならないのがネギの存在。特に、冬場に出荷される地物の「飛騨ネギ」は独特の甘さがあり、高山ラーメンとの相性は最高だという。

「支那そば」のルーツを残しつつ、独自の中華そばを生み出してきた飛騨高山。「飛騨の小京都」とも呼ばれる街並みとともに、土地に根ざした濃厚な一品を是非じっくりと味わっていただきたい。

●information
まさごそば
岐阜県高山市有楽町31-3