前回のレビュー記事から約一週間。本来は外出時のメモマシンとして興味をそそられたSurface RTは、利用できるWindowsストアアプリが乏しく、タッチカバーの性能面で当初のニーズを完全に満たすことは難しかった。そのためSurface Proを購入した訳だが、前回の記事でも述べたように、持ち歩きデバイスとしては少々重い。もっぱら屋内で気軽に利用できるWindowsマシンとして落ち着いている。

発表会で展示されていたSurface Pro

筆者はサブノートサイズのノート型コンピューターをデスクトップ型コンピューターと併用しているが、Win32/Win64アプリケーションがそのまま利用できるタブレット型コンピューター(もちろんSurface Proのこと)は、実際に使ってみるとかなり便利。タッチ操作に慣れてくると、キーボード&マウス操作に限定された他のノート型コンピューターを触るのが億劫(おっくう)になってしまうほどだ。

あとは、普段から使っている日本語IMEやテキストエディターをインストールすれば、日常的な作業環境が手に入るのは当たり前ながらも、Surface RT(Windows RT)では得られなかったメリットである。もっとも筆者は128GBモデルを選択しているため、インストールするデスクトップアプリやWindowsストアアプリは厳選しなければならない(SSDの空き容量が少ない)。microSDXCカード上にインストールするという選択肢もあるが、結局管理が煩雑になるため、必要最小限のアプリケーションのみインストールすることにした。

唯一の欠点と言えるのがバッテリー駆動時間。発表会の場で日本マイクロソフトの人間が「体験値」と述べていた通り、実際に使ってみても4時間程度しか持たないため、同レベルのUltrabookと比べると、モバイルシーンでの利用はあまり現実的ではない。だが、Windows 8が備える高速スタートアップにより、起動時間は大幅に短縮されている。シャットダウンした状態からロック画面が現れるまで10秒程度のため、未使用時はスリープではなくシャットダウンを選択しても、さほど気にならないのは大きな長所に数えていいだろう。

簡単なベンチマークで気になったのは…

さて、前回のレビュー記事でも述べた様に、Surface Proはハードウェアスペックを誇るマシンではなく、ユーザーのニーズに合わせて利用できるタブレットというスタイルが売りの一つである。そのため、スペック的な情報は公式サイトの仕様で十分把握できるが、数値として性能を知りたいという方も少なくないだろう。

Windows Vista以降はシステム性能を数値化する「Windowsエクスペリエンスインデックス」が備わっているが、やはり一般的なベンチマークソフトを用いた方がピンと来るはずだ。そこでベンチマークを実行してみることにする。今回はWindows 8に対応したPCMark 7 BASIC EDITIONを使った。バージョンは最新の1.4.0.0だ。

結果は図01の通り「4510」ポイント。比較対象とした、Windowsエクスペリエンスインデックスが7.1~8.1となるIntel Core i7-3770およびNVIDIA GeForce GTS 450を搭載したデスクトップ型コンピューターで測定すると「5212」だったことを比べると、Surface Proの結果は優秀な部類に入るだろう。このベンチマーク結果はFUTUREMARKのWebサイトで参照できるので、興味をお持ちの方はご覧頂きたい(図01)。

図01 PCMark 7 BASIC EDITIONによるスコアは「4510」ポイント

このベンチマーク測定中に気になったのが本体の温度だ。過度な負担や充電中には、本体背面部分(Webカメラからキックスタンドあたりまで)が意外と熱くなる。オフィスや自宅の机にキックスタンドを立てて使っている分には問題ないが、タブレットとして使用する場合、どうしても背面に手を回すことになるため、熱さが気になって持ち続けるのは少々厳しいかもしれない。もっとも、タブレット利用で過度な負荷を与え続けるようなシーンは皆無に近く、充電しながらの利用もまずないことを踏まえると、「このような問題もある」と気にとめる程度で構わないだろう(図02)。

図02 バッテリー充電時や過度な負荷をかけると、このあたりが熱くなる

このような理由で筆者はキックスタンドを開いてSurface Proを利用するシーンが多いのだが、そうなると気になるのがポインティングデバイス。タッチカバー/タイプカバーにはタッチパッドが備わっているものの、サイズが小さいため使いやすいとは言い難い。ちょっとした操作なら画面を直接タッチするか、電子ペンで操作できるが、本格的に利用する場合はUSBマウスやBluetoothマウスを用意した方がいいだろう。

日本マイクロソフトのSurface公式アカウントの発言によると、Surface Proではワコムのデジタイザ技術が用いられており、電子ペンとディスプレイとの間は0.7ミリで認識し、筆圧感知も1,024レベル(段階)のため、メモ書き環境としては十分。作成したメモ書きデータはSkyDrive上に保存しておけば、別の環境でも簡単に参照できるため、コンピューター間のデータ移行で戸惑うようなことは皆無だった(図03~04)。

図03 日本マイクロソフトのSurface公式アカウントによる発言

図04 付属のWord 2013もペン入力に対応しているため、そのまま手書きメモが作成可能

以上、Surface Proを使っていて気付いた点を挙げ連ねてみたが、実売価格は128GBモデルが99,800円、256GBモデルが119,800円というのはかなり割安だ。例えば、Windows 8 Proを搭載してタブレット利用が可能なコンバーチブル型のPCと比較しても、コストパフォーマンス的には引けを取らないのである。Webブラウジングだけではもの足りないが、パワフルな環境は必要ないというユーザーであれば、メインマシンとして利用することも可能だろう。

阿久津良和(Cactus)