神鋼環境ソリューション(神鋼ES)は5月30日、筑波大学との共同研究により、バイオマス生産性に優れ、かつ油脂含有率の高い微細藻類「ユーグレナ」の新規株を発見し、培養に成功したと発表した。

成果は、筑波大の渡邉信教授と神鋼環境ソリューションの研究者らの共同研究チームによるもの。

微細藻類は石油の代替となる油脂を生産すること、食料と競合しないこと、パーム・菜種などの油脂植物と比較して10倍以上の油脂生産能力を持つことから、次世代のバイオマス燃料として注目されており、現在、国内外で活発な研究が行われている。

微細藻類を原料としたバイオ燃料化技術の開発で重要な課題となるのが、生物種の選択だ。神鋼ESは筑波大との共同研究により、各種微細藻類の増殖速度、油脂含有率などの培養条件を変更して評価を実施、今回「ユーグレナ」の新規株を見出したというわけだ。ユーグレナは光合成を行う植物的性質を持ちながら、「すじりもじり運動」をするという動物的性質も兼ね備えたユニークな生物である。

今回の新規株は、これまでバイオ燃料として有望ではないかと考えられてきたユーグレナ・グラシリスZ株(国立環境研究所保存株:NIES-48)と比較して、バイオマス生産性および油脂含有率が共に2倍以上であることが、培養実験にて確認された。また得られたバイオマスは、石炭と同程度の燃焼カロリーを有することも確認されている。さらに、有機物を含んだ排水においても良好な増殖が確認されており、排水を浄化しながらバイオ燃料を生産する技術の可能性が見出された形だ。現在は、培養条件のさらなる最適化が推進されているところである。

神鋼ESは今回の成果を活かし、排水処理を兼ねたエネルギー生産技術の確立を目指して引き続き筑波大と共同で研究を推進していくという。さらに、筑波大との共同研究を通じて、「つくば国際戦略総合特区」および「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト」にも貢献していく予定とした。

またユーグレナの場合は、それ自体の栄養価が高いことを活用した健康食品生産、および「パラミロン」(ブドウ糖がβ-1,3結合した多糖)と呼ばれる独自の貯蔵物質が持つ「免疫賦活作用」(免疫機構を活性化する働き)の機能性を活かした商品生産の可能性についても検討しいくとしている。