アベノミクスや日銀の"異次元緩和"で、これから金利が上昇するという見方が広がっています。住宅ローンを返済中の人は、金利が上がったら住宅ローンはどうなるのか、今借り換えるべきかどうか、気になるところでしょう。今回は、金利上昇と住宅ローンへの影響について考えてみます。

住宅ローン金利の仕組み

住宅ローンの金利は、全期間固定型、固定期間選択型、変動金利型の3タイプに分けられます。

  • 全期間固定型:借り入れたときの金利がローン返済終了まで変わらず、毎月返済額もずっと同じ

  • 固定期間選択型:変動金利型がベースで一定期間を固定金利にできるというもの。固定期間は2年、3年、5年などから選択。一番多く利用されているのは固定期間10年タイプ

  • 変動金利型:金利は半年ごとに見直されるが、毎月返済額は5年間変わらないのが一般的

全期間固定型と固定期間10年型の金利は、長期金利に連動します。これに対して変動金利型の金利は、短期プライムレート(銀行が企業に貸し出す期間1年未満の場合の指標となる金利)に基づいて決まり、短期プライムレートは短期金利に連動します。このように、固定金利型と変動金利型では、金利の決まり方が違います。

短期金利のほうが長期金利より低いのが普通なので、住宅ローン金利も、変動金利型が最も低く、次が固定10年型で、全期間固定型がいちばん高くなっています。そのため、ここ数年、住宅ローンを借りる人の約半数が変動金利型を選んできました。

変動型には「未払い利息」が生じるリスクが

変動金利型の住宅ローンは、毎月返済額が5年間変わらず、その間に金利が変動した場合は、毎月返済額のうちの元本の返済に充てられる部分と利息の支払いの部分の比率が変わります。金利が上昇すると、利息の支払いが増え、元本の返済がなかなか進まない状態になります。

6年目に毎月返済額が見直されますが、元の返済額の1.25倍を上限とする金融機関が多くなっています。そのため返済額が急にアップすることはありませんが、金利が大きく上昇していて、本来は1.25倍以上の毎月返済額が必要な場合、1.25倍を超えた部分は返済しきれず「未払い利息」が生じることになります。つまり、金利が急上昇すると新たな借金を背負うことになる可能性があるのです。

日銀は、短期金利を低く抑える方針をとっているので、今のところ短期金利が急に上昇するという状況ではありません。したがって、変動金利型の金利もすぐに上がることはなさそうです。

とはいえ、住宅ローンの返済は20年あるいは30年先まで続くので、返済が終わるまで短期金利がずっと低いままであるとは考えにくいでしょう。特に、物価上昇率が日銀が目指すとおりに上がれば、短期金利の引き上げにつながります。

このところ全期間固定型や固定期間10年の住宅ローン金利はゆるやかに下がり、過去最低水準となっています。そこで、今のうちに、金利上昇リスクのある変動型から全期間固定型へ借り換えようとする人が増えています。

変動型は借り換えるべき?

現在、変動金利型の住宅ローンを返済している人の中には、「短期金利が上がりそうになった段階で全期間固定型に借り換えればいい」と考える人もいるようですが、短期金利より長期金利の方が先に上がるので、短期金利が上がり始めたときには長期金利が高くなってしまっていると予測できます。そのため、今借り換えたほうがいいかどうかが悩みどころになるわけです。

ローンの残高が多いケースや残りの返済期間が長い場合は、今借り換えておいたほうが安心でしょう。目安は、残高が1000万円以上、返済期間が10年以上といったところです。ただ、共働きでどんどん繰り上げ返済ができる人や、ローン返済額がアップしたときに預貯金で繰り上げ返済ができる人であれば借り換えなくても大丈夫かもしれません。

変動型から固定型へ借り換えると、毎月返済額はアップします。借り換えによって毎月の返済額がいくらになるか、金融広報中央委員会のウェブサイトなどで試算してみるとよいでしょう。また、借り換えには費用がかかることも忘れないでください。借入額や借入期間によって異なりますが、30~50万円くらいは見込んでおく必要があります。

固定期間選択型や全期間固定型は?

長期金利は日銀がコントロールできないので、金利上昇のリスクが大きいのは固定期間10年型のローンです。11年目から再度10年固定を選択すると、毎月返済額が大きくアップする可能性があるし、そこで変動金利を選択すれば「未払い利息」のリスクを負うことになります。

対処法としては、お金を貯めておいて10年の固定期間が終わったときに繰り上げ返済すること。ローンの残高を減らすことで、返済額のアップを抑えられます。あるいは、今のうちに全期間固定金利型に借り換えることも考えられます。

全期間固定金利でローンを返済中の人も、より金利の低い固定型のローンに借り換えることによって、毎月返済額や総返済額を減らせることがあります。金利差が0.5%程度で借り換え効果があることもあるので、試算してみて、借り換え費用も考慮したうえで、借り換えるかどうか検討してみてください。

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。また、リニューアルされたホームページのURLは以下の通りとなっている。

http://www.m-magai.net/