花々も咲くのどかな景色の中を走る秩父鉄道

緑が濃くなってきたら、秩父に行ってみよう。連なる山々、深い森、清涼な湧水、長瀞の川下り……。東京のすぐお隣とは思えないほどの自然が待っている。秩父に行くならば秩父鉄道を利用するのが正解! SLも走るローカル線の旅を紹介したい。

長瀞遊びの〆には天然かき氷を

秩父鉄道の路線図

秩父鉄道の開業は明治34年(1901)のこと。開業時は熊谷―寄居間を運行していたが、現在は埼玉県北東部の羽生から西部の三峰口までを走り、西武線とも乗り入れている。その利便性から、観光・通勤の双方に活躍しているのが特徴だ。

今回は、JR高崎線に乗って都心から熊谷への移動に利用。熊谷は北関東の玄関口とも言える駅で、ここから秩父鉄道に乗り換えることにした。

車窓からののどかな景色にほんわかとした気分に浸っていると、「ひろせ野鳥の森」という駅に着いた。降りて見れば山小屋風の木造の駅。2003年に開業というから意外に新しい。駅名が示す通り、県営荒川大麻生公園「野鳥の森」の最寄り駅でもある。

再び電車に乗り込み少しすると、秩父往還の街道筋の宿場町とした栄え、かつては鉢形城もあった寄居町に到着。こちらも途中下車して歩いてみれば、レトロな趣の寄居観光案内所、のどかな円良田湖、大きな布袋様にも出会える寄居七福神など、思いのほか見所が多いことに気づく。

車窓から見る山々の景色も魅力

それを越えるといよいよ長瀞(ながとろ)だ。木造に丸ポストがある駅舎は「関東の駅百選」に選ばれたこともある。その前でパチリと記念撮影。ちなみにこの駅、明治時代には近くにある山の名をとり宝登山駅と呼ばれていたが、大正時代に長瀞駅に改名したのだとか。

長瀞の名所と言えば、何と言っても荒川上流の景勝地である長瀞渓谷だ。緑の中に広がる岩畳で知られ、船頭のいる和舟に乗って長瀞ライン下りができるほか、カヌーやラフティングの絶好のスポットともなっている。また、たっぷり遊んだ後に食べる天然かき氷も名物だ。

風情のある長瀞駅。長瀞駅で下車すると、迫力満点の長瀞ライン下りが

ハイキング感覚で楽しむ三十四カ所巡り

長瀞を過ぎると皆野駅、秩父駅と、より深い秩父エリアへと突入することになる。秩父はパワースポットとしても広く知られている場所だ。緑深い山々の息吹、湧き出ずる生命の源の水の一滴一滴。確かにいるだけで癒やされ、背筋がシャンとなるような気がしてくる。

また、ここは秩父三十四カ所の観音霊場を巡る札所巡りの地としても昔から知られている。ちなみに、ともに日本百番観音に数えられる西国や坂東は三十三カ所だが、秩父のみ三十四カ所となっているのが特徴だ。

また、西国は京の公家からの信仰を集め、坂東が鎌倉武士の信仰の地であったのに対し、秩父は庶民からの信仰が篤い。人と人との素朴な触れ合いに出会えるのも、秩父の魅力のひとつだ。

札所巡り、巡礼などというと堅苦しさを覚えるかもしれないが、現在はハイキングコースとしても人気。和銅黒谷の札所1番「四萬部寺」に始まり、秩父の「常楽寺」や皆野の「水潜寺」などを、初夏のさわやかな空気を感じながら巡るのもいい。

動きやすいカッコウで札所巡りを。写真は四萬部寺で、黒谷駅から徒歩約40分

そして終点の三峰口。三峰口からバスで50分、最近特に若い女性からパワースポットとして人気の三峯神社がある。三峯神社は秩父神社、寶登山神社とともに秩父三社に数えられる。標高は1,100m。

その昔、日本武尊(やまとたけるのみこと)が、その美しい山川の風景から伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉册尊(いざなみのみこと)をしのび、二神を祀ったのが始まりと伝えられている。境内には明神型鳥居が3つ並ぶ三ツ鳥居、龍神が住むと言う神乃山水、そして狛犬ではなく山犬(狼)を見ることができる。

木立そびえる参道を本殿に向かって歩けば、マイナスイオンをビンビンに感じて、身体の中からきれいになっていく感じがしてくる。また近年、樹齢800年を超えるとされるご神木や2本の木が絡み合うように立つ縁結びの木などは、TVでも紹介されて多くの人が訪れていると言う。

「パレオエクスプレス」に乗れば旅情感アップ!

自然に癒やされ、神々に出会える秩父の旅へは、通常の秩父鉄道もいいものだが、もしタイミングが合えば都心から一番近くを走る蒸気機関車「パレオエクスプレス」に乗って行くのもいいかもしれない。パレオエクスプレスとして走っているC58363は、21世紀を走る唯一のC58形。SLの力強い走りを体感してみてはいかがだろうか。

東京からすぐに会いに行ける蒸気機関車

上長瀞―親鼻間の荒川橋梁は、眺めるだけでも魅力的

ちなみにこちらの蒸気機関車に乗るには、乗車区間の普通乗車券に加えてSL整理券が必要なのでご注意を。自由席は大人・子供一律500円、指定席は同700円だ。発売期間は乗車日の1カ月前から2日前までで、運行本数は1日1往復。事前に目的地への到着時刻をチェックしよう。

ちなみに、SLパレオエクスプレスの社内放送は林家たい平師匠が担当しているので、落語ファンは是非一度ご乗車あれ。あの軽快なトークで沿線の見どころを紹介してくれるので、行ってみたいところがたくさん増えるはず。

また、パレオエクスプレスのオリジナルキャラクター、パレオ君とパレナちゃんにも運が良ければ会えるかもしれない。ふたりのイベント出演予定については、パレオ君とパレナちゃんがつけているとおぼしき(?)公式ブログをチェック!

かわいい人気者、パレオ君とパレナちゃん