日経平均株価が一時1万5000円を大きく上回り、その後調整が入っているものの、アベノミクス効果で盛り上がる日本株式市場。日興アセットマネジメントが4月中旬に行なったアンケートでも、アベノミクスを受けてすでに行なった投資先として、日本株や日本株投信を挙げる人が圧倒的に多かった。だが、日本株式への投資手法として「ETF(上場投資信託)」という選択肢があることは、意外と知られていないかもしれない。そこで今回は、「ETF」、しかも日本株の市場の動きに連動する「ETF」の魅力について、同社 ETFセンター長である今井幸英氏に聞いてみることにした。

日興アセットマネジメント ETFセンター長の今井幸英氏

「機動的」に売買が可能、売買の値段を決めた"予約注文"

――日本株に投資する方法として、まず頭に浮かぶのが投資したい会社を1つひとつ選んでその会社の株を買う方法。次に、もっと少額から投資したいとか、「複数の会社に分散して投資したい」「自分で投資する会社を選ぶのが難しいので専門家にまかせたい」などと感じる人にとって便利な投資信託を利用する方法が挙げられると思いますが、そのほかに日本株に投資する方法はあるのでしょうか?

日本株のインデックスファンドへの投資を考えているなら、上場投資信託(「ETF」)という選択肢もあります。

――インデックスファンドとは、どんな投資信託なのでしょうか?

日本株の投資信託には、大きく分けて「インデックスファンド」「アクティブファンド」の二つのくくりがあります。「インデックスファンド」というのは、日経平均株価に代表されるような「指数(インデックス)」の動きに連動することを目指して運用されるファンド(投資信託)のことです。「インデックスファンド」では日経平均株価が上がれば上がるというように、連動している指数にあわせた値動きが期待できるので、初心者にも分かりやすい投資商品です。「ETF」も基本的には、指数の動きに連動した運用をめざす商品です。

――なるほど。それでは、インデックスファンドと「ETF」とはどう異なるのですか?

「ETF」は投資信託の一種ですが、一般の投資信託と異なるのは、証券取引所に上場しているという点です。「上場している」ということは、株の取引のように、証券取引所の取引時間中、たとえば東京証券取引所であれば午前9時から11時30分の間と、12時30分から午後3時までの間は、基本的にいつでも売ったり買ったりすることができます。これが「ETF」の大きな特徴であり、魅力の一つです。

――そのほかに投資家にとって魅力的な点はありますか?

投資家にとって「ETF」が便利な点として、売りたい値段や買いたい値段を自分で決めることができるという点があると思います。「ETF」は、証券取引所で売買されていて、証券取引所の取引時間中、売り買いされる値段は変動しています。ですから投資家はネットなどでその値動きを見ながら、自分で売り買いしたい値段を決めて証券会社に売買の注文を出すことができるのです。

――リアルタイムで値動きを見ながら注文を出すことができるのは、確かに魅力的な感じがしますが、日中仕事があるビジネスパーソンには難しいような感じもしますが?

前述のとおり、「ETF」では、この値段になったら買う、あるいは売ると自分で値段を決めて売買の「予約注文」のようなことができます。これを「指値(さしね)注文」といいます。この「指値注文」は一般に、その有効期間を「きょう1日だけ」とか「きょうから何日後まで」などと設定ができます(注文を受け付ける証券会社によって異なります)。ですので、例えば、その「ETF」の値段が今週中に1万4,000円まで下がったら買いたいと考え、月曜日に5日間の有効期間を設定して指値注文を出しておけば、金曜日までの間に取引価格が1万4000円まで下がった時点で、売買が成立することになります。

テレビのニュースなどには必ず日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などといった、日本の株式市場の情報は出てきますよね。ニュースでその日の日本株の値動きを見て、「あー、そろそろこの値段になりそうだな。これぐらいまで下がったら買いたい(上がったら売りたい)な」と感じたら、売り買いしたい値段を自分で決める「指値注文」を出す、というようなこともできるわけです。もちろん、注文を出したあとの値動き次第では、一度も自分が設定した値段になることなく、設定した注文の有効期間が終わってしまうこともあり得ます。その場合は、売買は成立しないことになります。

――一般の投資信託に比べて、上場している投資信託である「ETF」は、値動きに応じた主体的な判断に基づく取引ができるわけですね。

そうですね。そういう意味では、市場に対する細かい感覚みたいなものが養える投資商品だということができるかもしれません。一般の投資信託に比べて、"機動的"な取引ができるともいえます。

――なるほど。なんとなく、株式の取引に似た面もあるんですね。

そうですね。個別銘柄を取引している場合は、値段をいちいち見に行かなければなりませんが、日経平均やTOPIXはニュースには必ず出てきますから、「ETF」では値動きの感覚はつかみやすいといえるでしょう。

1口1,000円前後で買える「ミニETF」も、どの証券会社でも取引可

――お聞きしているうちに、「ETF」なら、株や投資信託に投資したことがない私でも、なんだかできそうな気がしてきました。

実は今年の3月25日に、当社の「上場インデックスファンド日経225(ミニ)」(愛称:上場日経225(ミニ))を東京証券取引所に上場しました。当初の価格は1口1,000円でしたが、今は1口1,200円前後で取引されているようです。この「ETF」は一口から購入が可能です。

――ということは、1,200円前後から投資できるんですね。それなら、飲み会を1回我慢すれば、3口くらい買えそうですね(笑)。ところで「ETF」を取引するなら、まず、証券口座を開設することが必要ですね。

そうですね。実はその辺りにも「ETF」のメリットがあって、「ETF」は証券取引所に上場されているので、原則としてどの証券会社でも取引ができることが挙げられます。

さらに言えば、「ETF」には日本株の指数に連動するもののほかにも、外国株、外国債、J-REITなど様々な資産の指数に連動する商品が取り揃えられています。「ETF」を使って分散投資ということもできますよ。

――いろんな活用法が考えられるんですね。日本株や日本株投信への投資を考えている人にも、ぜひ、「ETF」を選択肢の一つとして考える価値がありそうですね。本日はありがとうございました。