しょう油と団子の組み合わせは、日本が生んだ黄金タッグと言える味

北限の海女さんたちが活躍する三陸の街、岩手県久慈(くじ)市が誇る「久慈まめぶ汁」をご存知だろうか? NHK連続テレビ小説「あまちゃん」にも登場し、現在大ブレイク中のご当地グルメだ。でも実際、どんな味なのだろうか。今回はこの心がなごむ故郷の味を紹介しよう。

ドラマ効果で人気に火がついた!

久慈市は美しい山と海に恵まれた、岩手県北部に位置する小さな街。北限の海女さんが現役バリバリに活躍する街で、現在NHKで放送中の「あまちゃん」のロケ地にも選ばれた。

この久慈市が誇る郷土料理が「久慈まめぶ汁」だ。ベースは昆布や魚介のきいたしょう油味なのだが、具材の主役は練った小麦粉の中に粒上のくるみや黒砂糖をまぶした、ほんのりとした甘みがある「まめぶ」という団子なのである。野菜や油揚げなどたくさんの具材とともにまめぶを煮込んで完成する。

久慈にはこの「久慈まめぶ汁」を食べさせてくれる店が数多くあるが、この料理は自分で作ることもできる。ドラマの影響で全国からまめぶの注文が殺到し、久慈ではまめぶ不足になっているほどだという。

大鍋で大量に煮込むほど、味わいは更に深くなる

行事ごとで出された真の庶民派郷土料理

しょう油とくるみ、しょっぱさと甘さの組み合わせを奇異に感じる人がいるかもしれないが、思い出していただきたい。日本にはしょう油団子という古来から愛されるグルメもある。

もともと「久慈まめぶ汁」はお祝いごとや仏事など、行事ごとのために作られた料理だ。約200年前、南部領だった時代に、凶作のため「百姓は麺類やそばきりを食べてはならない」という御法度令達があった。行事ごとで麺類を食べることができなくなった農民たちが、代用として小麦の練り粉に味付けをして団子にしたのではないか……というのが、「久慈まめぶ汁」のルーツとして語り継がれている。

慶事にはまめぶを大きく、反対に凶事にはまめぶを小さくして食していたという。現在では日常的に地元民が親しむ味として定着しており、最近のご当地B級グルメブームの中でも注目される存在になっている。

一見するとトン汁風、寒い季節の食べ物のように思われるかもしれないが、どちらかというと、やや個性のあるみそ汁といった存在。久慈では四季を通じた常食となっている。

具材の種類が多ければ多いほどいい

最新情報は「久慈まめぶ部屋」でチェック

日本人のDNAに優しく染み込むような味がする

では、久慈のどこに行けば「久慈まめぶ汁」を食べることができるか。市内で食べられる店は複数あるが、おすすめなのは久慈駅にほど近い「まめぶの家」だ。定食、単品いずれも低価格でボリューム満点のメニューがそろう大衆的なこの店の代表的なメニューに、「久慈まめぶ汁」がある。単品でもオーダーできるが、定食につけることも可能だ。

また、地元有志が結成した「久慈まめぶ部屋」という町おこしのための団体がある。団体名にも掲げているように、「久慈まめぶ汁」を核にしながら地域の魅力を発信している。全国の様々なイベントに積極的に参加しながら「久慈まめぶ汁」を普及しているので、地元にいながら「久慈まめぶ汁」を食べてみたい人は、この団体の動向をチェックしていただきたい。

強烈なインパクトや奇想天外な要素は決してないが、何とも優しく心に染み入るような、「これぞ日本の味」と誰もが感じる……それが「久慈まめぶ汁」の大いなる魅力的なのだ。