国立情報学研究所(NII)とマインツ大学の研究チームは5月14日、半導体システムで発生するいくつかの物理特性を利用して、確実かつ継続的に「量子光」を生成する新たな光源の開発に成功したと発表した。

同成果はNIIのティム・バーンズ助教を中心に行われたもので、詳細は5月13日付の「Physical Review B Rapid Communications」に掲載された。

光はその種類によって波長分布が異なる。レーザー光は単色(波長が1種類しかない)という点が特徴となっているが、そうした単色光であっても、生成方法によって状態が異なる場合がある。従来、レーザー光は、理想的な正弦波に近いため、エンタングルメントのような特異な量子機械特性が存在しない「古典的」な光だとされてきた。しかし、光には本来、特別な完全「量子」状態が存在することが知られており、量子光学分野では、そうした光の状態はウィグナー関数で表され、正の場合は「古典的」、負の領域である場合、その光は量子特定を持つとされている(厳密には「非ガウス光」と呼ばれる)。

装置から生成されるウィグナー関数の3Dプロット

半導体構造では、光は「微小共振器量子井戸」と呼ばれる構造により、「励起子ポラリトン」と呼ばれる粒子が励起される。励起子ポラリトンが十分に生成されると、ボーズ・アインシュタイン凝縮現象が発生し、それにより粒子が自発的にコヒーレンスを形成し、波動関数がすべて位相コヒーレントとなる。

また、励起子ポラリトンは位相コヒーレントとなると、構造の上部から光が発散され、半導体を離れ、その光は、ボーズ・アインシュタイン凝縮により位相コヒーレンスにありながら、励起子間の相互作用により反発し合うという、光子が互いの存在に影響を受けないレーザー光とまったく異なる特異な性質を持つこととなる。

従来、こうした非古典的な光の生成は確率的手法に頼っていたが、そうした手法では、一時的な生成しか出来ず、一定の確率で失敗してしまうという課題があった。

しかし、今回、研究チームが開発した技術を活用することで、スイッチを入れるだけで光が発生するレーザーと同じように、光を継続的に発生させることができるようになり、これにより、非古典的な光を利用した将来の量子技術の開発が進むことが期待されるようになるという。

光生成装置の略図。DBR=分布ブラッグ反射鏡、QW=量子井戸、metal mask=金属マスク、substrate=基板、pump laser=ポンプレーザー、output=出力光、injection locking laser=注入同期レーザー

なお、研究チームでは、光を使った量子計算の場合、このような非ガウス光は古典計算を超えるためには不可欠であるということが知られているため、量子暗号や量子コンピューティングでこの技術の活用により発展が期待されるとコメントしている。