ポーラ・オルビスグループのポーラ化成工業は4月17日、毛母細胞周辺にメラノサイトの移動を誘導する因子に着目し、同因子の産生促進効果を持つ「加水分解黒米エキス」を開発したことを発表した。

白髪の約80%が毛乳頭周辺にメラノサイトが存在しない「メラノサイト消失型」であるという。毛包に存在するメラノサイトは、バルジ領域に存在し、毛乳頭を囲むように存在する毛母細胞周辺に移動することが知られており、毛母細胞は、隣接するメラノサイトが産生したメラニンを受け取りながら分裂することで、色の付与された毛髪となるため、メラノサイトを効率的に毛母細胞周辺に移動させることができれば白髪を減らすことが可能になると考えられている。

このメラノサイトの移動は毛周期と密接に関係しており、休止期から成長期初期にかけて毛乳頭細胞が産生するSCF(Stem Cell Factor:メラノサイト移動誘導因子)に誘導されることが知られているほか、毛包でのSCF産生量は成長期に多く、退行期~休止期には産生量が低下することが知られている。

毛包におけるメラノサイトの動き

そこで研究グループは、休止期に低下したSCF産生量が成長期初期においても低下したままであると、メラノサイトの移動が誘導されずに白髪になると考えら、毛乳頭細胞のSCF産生を、休止期から成長期初期に特異的に促進させるような素材の探索を行ったという。具体的には、退行期~休止期への誘導剤である「TGF-β1」を用いて擬似的に退行期~休止期状態にある毛乳頭細胞を構築し、素材スクリーニングを実施したところ、加水分解黒米エキスを添加することで濃度依存的にSCF産生促進効果を持つことが確認されたという。

退行期~休止期にSCF産生促進が行われるということは、休止期後にあたる成長期初期のSCF産生促進につながることが考えられると研究グループでは説明しており、これにより成長期初期のメラノサイトの移動が促されることにつながると考えられ、白髪の改善が期待されるとする。

ヒト毛乳頭細胞培養上清中のSCF量の変化。実験の方法としては、ヒト由来毛乳頭細胞をマイクロプレートに播種し、1日培養後、TGF-β1と加水分解黒米エキスを含む培地を添加し、3日間の培養の後、培養上清を回収し、ELISA法によりSCF量を測定するというもの。結果はTGF-β1処理を実施しない対照を100とした相対値で示されている

なお同社では、今回得られた成果を取り入れた頭皮用薬用化粧品を、同グループの一員であるポーラより2013年の夏に発売する計画としている。