「女子会川柳」(ポプラ社刊・1000円)

社会人デビューし、まだ新入社員研修で同期入社の顔ぶれと席を並べて研修を受けているころでしょうか。それとも、1週間で部署を振り分けられ、すでに若い労働力として走り回っているのでしょうか。

そんな初々しい時期を経て、立派なOLとなった女性たちの16年分のつぶやきを集めた本が売れています。

「女子会川柳」(ポプラ社刊)はサンケイリビング新聞社・シティリビングが主催する公募「OL川柳大賞」の16年分の入賞作品から88句をセレクト。2013年1月に発売後、順調に売り上げを伸ばし、3カ月で8万部のヒットになっています。

川柳とは、五・七・五の数に合わせて作る短い詩。俳句や短歌のような季語も必要ないため、サラリーマン川柳やシルバー川柳など、世代や職業による公募はいくつも行われています。

本作収録作には

●入社時は 腰かけ今は 命がけ

●ついにきた! 新入社員と 同じ干支

●気がつけば 癒し系から 威圧系

など、社歴の長さを感じる作品も目に付くが、これには実は理由がありました。

シティリビング

そもそも主催の「シティリビング」とは、オフィスで働く20代~40代女性をターゲットにした企業配布の情報紙で、札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪・神戸、福岡の全国8エリアで66万部発行。配布は、許可を得たオフィスへ届ける形になっています。

私も会社員時代、総務部のあるフロアにいくと置いてあるのをたまにみかけたのですが、この読者調査によると、実は徐々にOLの平均年齢が上がっているというのです。

シティリビング編集部調べでは、2011年度の全国平均で読者の年齢は35.4歳。未婚者は61.5%、既婚者は38.5%。およそ半分が30代(52.6%)、40代(22.6%)と20代(22.2%)はほぼ同じ割合となっています。

そう、世にいう「OL」は、もはや20代でも、アラサーでもなく、アラフォー寄りなのです。

この調査結果について、サンケイリビング新聞社 シティリビング編集部編集長の山内綾子さんに伺いました。

「シティリビングの調査では、この20年間で平均年齢が10歳以上アップしています。これは、企業で働く女性の「晩婚化」と「結婚しても仕事を続ける」女性が増えていることが要因だと思います。

男女雇用機会均等法が施行されて20年30年がたち、働く女性が増えるとともに一般事務職ではなく総合職として働く女性も増加しました。20代で結婚とともに退職していた「寿退社」は昔の話で、今は自分で生活できるレベルの収入と仕事でのやりがいが得られ、男性や結婚に頼らなくても生きていける環境にあります。

また、男性の収入は上がらず、女性をリードできない草食系男子も増えているので、結婚しても仕事を辞める女性は多くないのが現状です」

なるほど。そのあたりのOLの叫びは、

●王子様 落馬したまま 迎え来ず

●年の差婚 部下がダンナに なる時代

●婚活で 出会った男 就活中

という句からも、感じられますね・・・。

OL川柳の募集が始まった16年前といえば、バブルも崩壊し、日本の景気は残念ながらこれまでいくつかの波がありつつも、トータルで見ても右肩下がり。その時代を働き続けてきたOLの思いがこの川柳には込められているのかもしれません。

「16年間の優秀句をあらためてよんでいたら、笑える作品がいっぱいで『あるある』『そうそう』とうなずきしきりでした。会社という組織の中で、したたかに、かつ前向きにがんばるOLの姿に、読んでいるこちらが励まされる気持ちになりました」(山内さん)

女子の間で、Twitterの160文字よりもさらに短く気持ちを伝える川柳、注目かも?

(取材・文 北本祐子)