ブラックホールと恒星がペアになって互いに回り続ける「ブラックホール連星」では、恒星からのガスが周囲を取り巻き、やがてブラックホールに吸い込まれていく。その高温ガスが落ち込んでしまう100分の1秒前に、10億℃以上に急激に加熱され、高エネルギーのX線を放出する様子を、理化学研究所の山田真也・基礎科学特別研究員や京都大学、日本大学、東京大学などの共同研究グループが捉えた。ブラックホールの直接的な証明に一歩近づく成果だという。論文は、米科学雑誌「ジ・アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ(The Astrophysical Journal Letters)」(オンライン版)に掲載された。

「はくちょう座X-1」ブラックホール連星の想像図(イラスト:佐藤暁子)
(提供:理化学研究所)

ブラックホールはアインシュタインの一般相対性理論に基づき存在が予言され、強大な重力のために光さえその中から脱出できない天体と考えられている。その後ブラックホールには、大質量の星が死ぬときの大爆発で作られる太陽質量の10倍程度の“軽い”ものと、銀河の中心に存在する太陽質量の約100万倍の“重たい”ものがあることが分かってきた。“軽い”ものが「ブラックホール連星」で、1971年に最初に発見された「はくちょう座X-1」など、私たちがいる天の川銀河には“ブラックホール候補天体”が20個ほど知られている。

研究グループは、X線観測衛星「すざく」を用いて、地球から3,000光年離れた「はくちょう座X-1」を観測した。ブラックホール天体からのX線強度は激しく変動し、強度のピーク時に周辺ガスが塊となってブラックホールに落ち込むと考えられている。解析の結果、ガスはブラックホールに近づくにつれて重力エネルギーを増し、それを放射のエネルギーに転化しながら、どんどん明るくなっていく様子を捉えた。ブラックホールに落ち込む最後の100分の1秒という瞬間に、10億℃以上に急激に加熱されていることが分かった。

この場合、もしもガスが落ち込んでいく天体に表面があれば、数千万℃の天体表面からの強い放射によってガスが効率よく冷やされるため、急激に10億℃まで加熱されることはないと考えられる。そのため今回の結果は、中心に“表面の無い天体”すなわちブラックホールがあることを意味し、ブラックホールの理論で予想されていたガスの温度上昇、X線の明るさの増加、その後のX線消失を強く支持するものだという。

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