東北初導入、登米市のご当地プレートはなんとコメ型

東北に来たら、町中や田園の道を颯爽(さっそう)と走るバイクのフェンダーに注目だ。真っ赤な飛行機、お城、秋田犬……ナンバープレートを彩る様々な意匠。文字と数字だけのそっけない通常プレートと違ってかわいらしく、バイカーもちょっと誇らしげだ。その人気ぶりに、東北の町々では「ご当地プレート」の導入ラッシュが続いている。

もはやバイクは「走る広告塔」

宮城県登米(とめ)市。県外の人には「えっ、それってどこ?」といった存在だろう。いわゆる平成の大合併によって2005年に誕生した新しい市であり、これといった観光スポットも少ない……。

しかし2008年、登米市のある施策が話題となり、同市の名は東北中に轟(とどろ)いた。東北地方の先陣を切って「ご当地ナンバープレート」を採用したのだ。原付き自転車、つまり125cc以下のバイクや農耕作業用自動車などを対象に、コメ粒の形をした「ご当地ナンバープレート」の交付を開始したのである。

「東北初ということのみならず、通常の長方形でなくコメ型という変わった形状ということもあって、各方面からお問合せが殺到しました。登米の豊かな水と緑をイメージさせ、特産品の米を県内外にPRしようとコメ型のデザインになったんです」(登米市市長公室・宮内さん)。

東根(ひがしね)市のプレートは全国一の収穫量を誇るさくらんぼ

天童市は名産品の将棋の駒だ

「ご当地ナンバープレート」は、「デザインナンバープレート」などとも呼ばれる。デザインに地元の観光資源や名物などの画を盛り込んだ、その土地だけのオリジナルプレートだ。登米市の導入は、愛媛県松山市、長野県上田市に続く全国3番目だった。コメ型プレートを付けた車両は、現在では5,800台にも及んでいる。

登米市の成功がきっかけとなり、山形県東根市、同県天童市(以上2009年)、宮城県気仙沼市(2010年)、青森県三沢市、福島県西会津町(以上2011年)、山形県新庄市(2012年)と、その後の東北では「ご当地プレート」の採用ラッシュが続いた。東根市はさくらんぼ、天童市は将棋の駒、気仙沼市はサメ、会津若松市は城と、各市とも地元が誇る特産品や観光名所をデザインに取り込んでいることで共通する。

「プレートに課税標識以外の付加価値を付け、動く広告塔として全国に発信しようという狙いです」(東根市税務課・芦野満敏さん)。

「マスコミ各社から取材を受け、本市を県内外に広くアピールすることができました」(気仙沼市税務課・千葉さん)。

サメは気仙沼漁港で水揚げされる代表的な魚だ

会津と言えばなんと言っても会津若松城

プレートに込めた震災からの復興の願い

東日本大震災や原発事故被害からの復興の思いを込めて、ご当地プレートを導入したケースもある。福島県では会津若松市が2012年8月、福島市が2013年1月と、いずれも震災後に導入している。

「元気な会津を市内外に情報発信するとともに、市民に愛されるオリジナルプレートが町中を走り、景色の一部となることで、震災の風評被害に負けない会津若松市をPRできたらと思っています」(会津若松市税務課・斎藤さん)。

「震災復興に向けて頑張る福島市を全国にアピールできるだけでなく、市民の方には故郷への誇りと愛着を持っていただけると思い、ご当地プレートを導入しました」(福島市税制課・玉根さん)。

福島市のプレートは「果物王国」をアピールし、風評被害と戦う

プレートが欲しさで原付バイクを買う人も

2013年3月1日現在、ご当地プレートを採用しているのは全国186市町村。その中でもデザイン的にトップクラスと思えるのが、青森県三沢市の「ミス・ビードル号プレート」である。とにかくかっこいい!

「First Nonstop Transpacific Flight in 1931」の英文もお洒落だ

ミス・ビードル号とは1931年、三沢市の淋代(さびしろ)海岸を飛び立ち、日本からアメリカ本土まで初の太平洋無着陸飛行に成功した飛行機の名前。三沢市では、その快挙から80周年を迎えたことを記念してプレートを作成した。青い陸地、白い太平洋、赤い飛行機という配色が抜群で、隣町の原付きバイカーたちの憧れの的だという。

「窓口での評判も良く、証明書を取りにくる際に見本をご覧になって、通常プレートと交換したい、これを機に原付きを買いたい、原付き第2種やトラクターにも導入してほしい、などといった声をいただいています」(三沢市税務課・角さん)。

三沢市のプレートは、原付き1種(50cc以下)のみが対象だが、前記した天童市の場合は「50cc」「90cc」「125cc」「ミニカー」「小型特殊」と5区分され、白、黄色、ピンク、水色、緑と色分けされている。ひょっとしたら今後、三沢市でも原付き第2種へ導入されるかもしれない。

大館市のプレートの絵は秋田犬の忠犬ハチ公

横手市は冬の風物詩かまくら

東北では地元住民からの人気の高さや評判の良さもあって、相変わらず「ご当地プレート」の導入ラッシュが続いている。2013年に入ってからは1月の福島県本宮市を皮切りに、4月の秋田県大館市、青森県三戸町、6月の秋田県横手市、7月の岩手県奥州市、一関市、金ヶ崎町、平泉町の4市町(共同)と続いていく。

いずれ、東北を走る全てのバイクのナンバープレートが、「ご当地プレート」になる日がやって来るのかもしれない……。

ご当地プレートの交付案内板が立つ大館市役所