日立製作所と日立GEニュークリア・エナジーは4月4日、福島第一原子力発電所で発生する放射性物質を含む滞留水の処理への適用を目指して、水中に溶解した放射性セシウムと放射性ストロンチウムを同時に99%以上の除去率で除去できる吸着剤を開発したことを発表した。

福島第一原子力発電所で発生した発電所建屋内の高濃度滞留水は、セシウムなどの放射性物質と海水成分(ナトリウム、塩素、カルシウムなど)を含んでおり、現在も放射性セシウムの吸着処理、ならびに海水成分の逆浸透膜での淡水化処理による浄化作業が続けられている。淡水化処理では淡水と濃縮海水が生成され、濃縮海水に微量の放射性セシウムと高濃度の放射性ストロンチウムが含まれ、液体の状態でタンク内に保管されているが、もし漏水すれば放射性物質が飛散する可能性などがあるため、その除去技術の確立が求められていた。

セシウムとストロンチウムは元素周期律表で属する族が異なり、水中に溶解した際の電荷やイオンの大きさが違うため、セシウム、ストロンチウムを吸着剤で除去する場合、従来は、セシウム用、ストロンチウム用のそれぞれ異なる種類の吸着剤を使用する必要があった。今回、日立などはチタン酸塩化合物に特殊処理を施すことで、セシウムとストロンチウムの同時吸着を実現したという。

また、滞留水に含まれる海水成分のナトリウム、カルシウムは、それぞれセシウム、ストロンチウムと化学的性質が類似しており、同様に吸着剤に吸着されるため、従来の吸着剤は海水条件でセシウム、ストロンチウムの吸着性能が低下する傾向があったが、同吸着剤では、セシウム、ストロンチウムを選択的に吸着する性質があるため、海水条件でも高い吸着性能を維持することが可能。

さらに、滞留水の組成を模擬した水からセシウムとストロンチウムを除去する実験を行ったところ、吸着剤体積の3000倍の量の水からセシウムとストロンチウムを99%以上除去できることを確認。これにより、同吸着剤を適切に用いることで、従来よりも簡便に処理水から放射性セシウムと放射性ストロンチウムを除去することができ、厚生労働省の飲料水の新基準値(10Bq/L以下)を満足させることもできるようになるという。

なお日立では、同吸着剤を淡水化処理の上流側のプロセス、または濃縮海水の処理プロセスで使用することで、従来の半分の吸着剤で滞留水から放射性セシウムと放射性ストロンチウムを除去することができるようになると説明している。

滞留水の処理の流れ