企業のソーシャルメディア活用が進む中で浮かび上がってきた、ビジネスゴールの実現という課題解決のために、オウンドメディアのソーシャル化が注目されています。

こんにちは、SMMLabの藤田です。

Facebookを初めとしたソーシャルメディアの活用で、企業のマーケティングは大きく変化しました。ソーシャルメディアは、以前は企業が繋がることの出来なかった未来の顧客とのダイレクトなコミュニケーションを実現しましたが、その一方でビジネスゴールの実現という意味では、収益化という課題も生み出しました。

また、ユーザー人気の盛衰の速さや相次ぐ仕様変更など、プラットフォームとしてのソーシャルメディアに依存するリスクへの懸念も大きくなり、改めて「トリプルメディア」それぞれの機能を全体のビジネスゴールに向けて最適化することが必要となってきています。

中でも自社のコントロール下で、関与度の高い生活者に向けて直接メッセージを発信することが出来るオウンドメディアの重要性を見直し、ソーシャル化を目指す企業が増えています。

参考:「トリプルメディア」とは?~今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!

http://smmlab.aainc.co.jp/?p=11321

今回は、オウンドメディアのソーシャル化に取り組むために重要と思われる3つのポイントを考えてみたいと思います。

【1】自社サイトがオウンド“メディア”化が出来ているか?

まず最初に、そもそも自社の運営するサイトが「オウンドメディア」として機能しているでしょうか。オウンドメディア化されていない企業サイトには、カタログ的な商品情報や更新されない企業ニュースしかなく、ネットユーザーが能動的に訪問する理由がありません。そのため流入経路の大半をSEO、SEMによる検索エンジンに頼り続けるしかなく、露出が広告出稿量に比例するという点で従来の広告戦略の範疇にとどまってしまいます。また、更新頻度の低いカタログ的な情報は変化に乏しく、即時性がないため再訪の動機に繋がりません。

「見込み顧客を集め、購買への最後の説得をする」「既存顧客との長期的な繋がりを維持する」という企業サイトの本来の目的を達成するためには、ネットユーザーとの接点を増やし、関係性を深め、売上などの具体的な成果に結び付けていかなくてはなりません。「企業として自ら伝えたい情報」と「ユーザーから求められる情報」をうまくすり合わせて、発信していくオウンドメディアである必要となるのです。

企業サイトがメディアであるための条件

“メディア”であるからには、情報を発信しなくてはいけない
“メディア”であるからには、読まれなくてはいけない
“メディア”であるからには、更新が継続されなくてはいけない

訪問したネットユーザーとの関係を継続し中長期的な売上を実現するためには、自社でやる理由、ビジネスゴールへ繋げる戦略が必要です。サイトの役割とそこでのコミュニケーションの目的が明確でなければ、結果的にユーザーには何も伝わらず、コミュニケーションメディアとして機能しません。「オウンドメディア」では、発信する情報がユーザーにとっても有益な情報であり、コミュニケーションを発生させるコンテンツとなっていることが重要なのです。

参照記事:企業サイトのメディア化と企業によるメディア運営

http://marketingis.jp/archives/592

【2】なぜオウンドメディアをソーシャル化するべきなのか?

流入経路を検索エンジンに頼った企業サイトではLPOが重視され、検索エンジンに最適化されたキーワードからコンテンツを作る必要がありました。しかし、そもそも検索とは既にニーズが顕在化した状態のユーザーによる能動的なアクションです。「課題」や「欲求」はあるが、それを解決するための「キーワード」が分からないユーザーには、検索する「動機」がないのです。

参考:「LPO」とは?~今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!

http://smmlab.aainc.co.jp/?p=10773

対してソーシャルメディアは、はっきりした「動機」がないユーザーとも接点を持てるため、継続的なコミュニケーションの中で徐々にニーズを喚起・顕在化することが出来ます。しかし、そこから生まれる興味・関心は検索エンジンでのニーズと同じであるとは限りません。

つまり、ソーシャルメディア以前の情報は企業が「伝えたい」ことと、ユーザーが「知りたい」ことが「検索」を通じてマッチしていましたが、ユーザーの情報入手源が「検索」から「ソーシャルメディア」へ変化したことで、「検索」だけに最適化したオウンドメディアの情報では、ソーシャルメディアで繋がったユーザーには興味を持ってもらえない可能性が出て来たのです。

また、ソーシャルメディアで繋がったユーザーはゆるい関心しか持っていないので、いきなり「もっと知ってもらいたい」、「理解して好きになってほしい」とオウンドメディアに誘っても、自分が知りたい情報がない企業サイトを訪問することはないでしょう。共感してもらえるコンテンツを用意したサイトに招待する、おもてなしをするという姿勢が必要です。

インターネット上のトラフィックの多くが、検索エンジンよりもソーシャルメディアに集まる時流の中で、オウンドメディアをソーシャルの方向にシフトしていかないと、企業は「お客様」と出会う機会すら無くなってしまうかもしれません。

ただし、ソーシャルメディアは外部環境の変化に大きく影響を受けるリスクがあるため、特定のプラットフォームに依存しすぎると、企業のマーケティング活動が制限される危険もあります。ですから企業はオウンドメディアをハブにして、多様なメディアを連携しながら活用する必要があるのです。「ソーシャル化」は、オウンドメディアをハブにするためのメディア戦略なのです。

オウンドメディアのソーシャル化に取り組んでいる企業事例

FASHION HEADLINE / 株式会社三越伊勢丹ホールディングス

http://www.fashion-headline.com

Nissho-Blocks / 日商エレクトロニクス株式会社

http://www.nisshoblocks.com

情報セキュリティブログ / 株式会社日立ソリューションズ

http://securityblog.jp/

【3】オウンドメディアソーシャル化 3つのポイント

(1)オウンドメディアに興味をもってくれる人について知る

オウンドメディアがソーシャルメディアユーザーに共感してもらい、興味を持ってもらうには、まず情報発信の設計を企業視点からユーザー視点に転換することが必要です。

・業界全体の情報
・ユーザー特性から導き出される情報
・ユーザーが欲しがる情報
・ユーザーが作る情報

こうした「ユーザー視点」の情報は、ソーシャルメディアでのコミュニケーションを傾聴する中で発見することが出来ます。また、ソーシャルメディア上のユーザー情報は、趣味や関心、属性情報からはじまり、従来はなかなか把握しきれなかった「ユーザーの人となり」を見ることが出来るので、オウンドメディアに訪問してくれたユーザーのソーシャルメディア上での人物像を踏まえたコンテンツやプロモーションを用意することで、よりユーザーの心を掴み関係を深めることが可能になります。

(2)オウンドメディア上でソーシャルへのユーザーアクションをサポートする

オウンドメディアのコンテンツがユーザー視点で設計されていれば、検索結果経由のアクセスよりも、ソーシャルメディア上でシェアされたURL経由でサイトにアクセスしてくる人が増えるはずです。その場合、訪問者がコンテンツをソーシャルメディアに共有しやすくするために機能的な面でサポートしたり(ソーシャルボタンやソーシャルプラグイン)、ユーザーがソーシャルメディア上に発した関連コンテンツをきちんと取りまとめられる(キュレーション機能やレビュー機能)環境を作るなど、オウンドメディアにソーシャルの声を取り込む仕組みを作っていくことが必要です。

また、Facebook等の既存のソーシャルアカウントを使ってサイトに会員登録・ログインできる機能(ソーシャルログイン)を採用すれば、ソーシャルグラフ(ソーシャルメディア上の人間関係)を活用できるので、すでにソーシャルメディア上で友達になっている人を招待する仕組みを用意することで新規ユーザー獲得も可能になります。

(3)ソーシャルメディアの登録情報をオウンドメディアで集積し、マーケティングデータと統合する

ソーシャルログインはユーザーにとっては簡単に手間なく登録・ログインできると同時に、企業としても趣味・嗜好・関心といったデモグラフィックデータ以外の付加情報を知ることができます。さらにソーシャルメディアにはユーザーが自ら進んでプライベートな情報を登録し、最新の情報に更新してくれますので、企業は新鮮な情報を自社の会員データに取り込み、マーケティングに活用することでROIを可視化し、オウンドメディアをソーシャルに対応させる意義が高まります。

このように企業はオウンドメディアを軸として、さらに長期的なエンゲージメントを目指したコミュニケーション戦略を取っていくことで、メディアの最適化を模索し、費用対効果の最大化を図るのが、オウンドメディアソーシャル化の目的ではないでしょうか。そして、データをオウンドメディアに集約して分析しておくことが、来るべき全方位コミュニケーション時代のビッグデータ活用にも生きてくるはずです。

オウンドメディアのソーシャル化を検討する中で、インターネットにおける自社のコミュニケーション戦略を見直し、整理することによって、改めてマーケティングの本来の目的と、目指す成果を意識してみてはいかがでしょうか?

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