WOWOWのドキュメンタリー番組『美術のゲノム 甦る幻の写楽!~江戸歌舞伎とヒット仕掛け人の秘密~』の収録がこのほど、都内のスタジオで行われ、メインパーソナリティーのいとうせいこう、漫画家の浦沢直樹、デジタル復元師の小林泰三が出演した。

左から、小林泰三、いとうせいこう、浦沢直樹

同番組は、時間の経過で色彩や描線が失われた日本美術を、学術的な裏付けをもとにデジタル復元して新たな発見をするドキュメンタリー。過去放送では、平安時代の『地獄草紙』や俵屋宗達作の『風神雷神図屏風』などの復元を行ってきたが、第7回の『美術のゲノム 甦る幻の写楽!~江戸歌舞伎とヒット仕掛け人の秘密~』では、江戸時代の浮世絵師・写楽が描いた歌舞伎の役者絵の復元に挑戦。芝居『けいせい三本傘』の16枚の役者絵のうち、戦前に紛失した1枚を、小林が白黒写真をもとにデジタル復元し、実際に木版で刷って復刻する。番組は、31日16時からWOWOWプライムで放送予定。

収録後、取材に応じたいとうは「『こんな色で描いたんじゃないか?』とか『こういうのが格好良かったに違いない』とか仮説を自由に言えたので、写楽のキャラクターが伝わりやすいと思う。他の写楽番組とは違うんじゃないかな」と自信を持ってPRし、小林は「ロックとかを語るように日本美術を語るきっかけになれば」とアピール。ゲスト出演の浦沢は「本業の画家じゃないと言われてる写楽の絵は、当時の絵描きのマナーから逸脱していてポップ。グッと太く持ってきたり、ツーと細くしたりする筆の強弱が天才的で気持ち良い」と漫画家目線で感想を語り、「下手な絵でも、確信を持って線を引くと人は惹きつけられるんですよ。たどたどしくて自信が無い線は、人に訴えて来ない」と力説すると、いとうは「それを"ヘタウマ"って言うんだ~。蛭子さんは確信を持って描いてんだね(笑)」と納得していた。

番組では、写楽を見出した蔦谷重三郎にも焦点を当てるが、浦沢は「絵描きがポップスターになったというのは、ブライアン・エプスタインがビートルズを、マルコム・マクラーレンがセックス・ピストルズを発見したのと似た雰囲気。アンディ・ウォーホルもそうだけど、ポップ文化というのは大量生産で楽しむものという概念なんですよね。アートっていうのはポップに語らないと、学術的になると見方が変っちゃう」と持論を展開すると、いとうは「出版の始まりでしょ?こういう仕事をしてる身からすれば、ご先祖様みたいな感じ。面白いものがあればパクってやろうという気持ちになる」と尊敬の念。また、今後復元したい作品について、小林は「茶碗かな。口を付けた感じとか重さとかも復元して。器は触んないと分かんないから」と意気込み、浦沢は「般若面がすごく好きなんですけど、作った当時は色が凄いんだろうなと思う」と今後の挑戦に期待を寄せた。