名古屋駅、新幹線ホームのきしめんが絶品といううわさは本当か?

昔から名古屋を訪れるビジネスマンの間で語り継がれているうわさがある。それは、「新幹線ホームの立ち食いきしめんがウマい!」ということ。果たしてそのうわさは本当なのか。論より証拠とばかり、名古屋駅で実地調査を開始した。

すき焼き風や名古屋コーチンのきしめんも!

名古屋駅の新幹線ホームは、東京行き(上り線)と大阪行き(下り線)の2つがある。そして、きしめんを食べられる店は、その各ホームの両端に2店ずつある。細かいことを言えば、16両編成の新幹線を基準にして、4号車のあたりと14号車のあたりだ。

つまり、新幹線ホームには計4店の立ち食いきしめん店が存在する。その中でも人気を博しているのが、東京行き・大阪行きホームの4号車に位置する「名代きしめん 住よし」だ。

ホームに堂々たる存在感の「名代きしめん住みよし」

まずは店頭にある食券を購入しよう。とここで、そのメニューの多さにビックリ。まぁ、基本的に具材のトッピングさえ変えればメニューは増えるのだが、定番の玉子入りやかき揚げなどに混じって、「すき焼き風」や「名古屋コーチン」入りなんてものもあるのだ。

一見切符に見えるが、これが食券! ちょっとした遊び心にぐっとくる

ちなみにトッピングの具材は単品売りもあるため、夢の「かき揚げ3枚入り」なんてことも可能だ。なのだが、今回は基本の味を確認するべく、スタンダードな「きしめん」340円の食券を購入。ちなみに名古屋コーチン入りは840円(!)だ。

340円でも、ダシを取る手間は省かない

食券を片手に入店すると、10人も入れば一杯になりそうなスタンディングカウンター。そのカウンターの中で、2人のスタッフのおばちゃんがテキパキと動き回っている。混み状況にもよるが、食券を渡せばもう、1分以内にきしめんを出してくれる。さすが立ち食いだ。

さて、つゆをひと口。口当たりはスッキリで、名古屋ならではの甘辛い味だ。ここできしめんを食べる人は、当然ながら名古屋人以外の客が多いはず。関東人でも関西人でもおいしく食べられる、それでいて名古屋ならではの個性を感じさせる。絶妙のバランスだ。

このつゆ、とにかく魚介のダシがきいている。それもそのはず、このダシは各店で直接取っているという本格派なのだ。お客が惹きつけられる分かる。

魚介のダシがきいて美味! ダシは各店舗で直接取っているという

麺は立ち食いならではの、するするっと短時間で食べられるモチモチ系。実はこの麺、冷凍麺なのだ。注文を受けてから茹(ゆ)でるから、作り置きして麺がのびてる!なんてコトはない。しかもきしめんは平麺だから茹で上がりが早いと、いいことづくめ。これもウマさの秘けつと言えるだろう。

そして忘れちゃならないのが、花かつお。これが風味を一段と引き立ててくれる。麺と一緒に花かつおもたぐって食べてみよう。口の中に、魚介エキスの風味がぐわーっと広がる。

あまりのうまさに一気にかきこめるから、完食するのにものの数分もかからない。一味をかけて味わって、一気につゆをすすってごちそう様! そして店を出て新幹線に飛び乗るのだ。なんとも、潔いではないか。

完食するのに数分もかからないが、余韻がいつまでも残る

1分に1杯以上のペースで回る店

店の始まりは昭和36年(1961)。それ以来、旅人のおなかを満たしてきた立ち食いきしめん。「この味を楽しむために、わざわざ名古屋で途中下車する」というファンまでいるんだとか。

運営しているジャパントラベルサービスによると、店舗にも曜日にもよるが、1日大体1,000杯は出るという。営業時間は朝6時から夜9時40分までだから1時間あたり約75杯。つまり1分1杯以上のペースで出ているのだ!店で作る香り高いつゆ、つるっと食べられる冷凍麺、そしてバリエーション豊富な具材。この3要素が、これからも「新幹線ホームのきしめん」の人気を支えるのだろう。

春には天ぷら、マーラーマーボーも開発中!?

しかし、この3要素以外に思わぬ人気のヒミツがあった。それは「先入観のない攻めの姿勢」だ。聞くところによると、このきしめん店の担当者は実は東北出身。つまり、「きしめんとはかくあるべき」という先入観がなく、名古屋人には考えつかないアレンジを次々と生み出すのだという。

ちなみに一番人気は定番中の定番「かき揚げきしめん」だが、それ以外にもメニューはたくさん。新商品や季節の限定商品が常に続々と登場するため、食券機にメニューがずらずら~~~っと並んでいる。「春は、ヒメタケとたらの芽の天ぷらをトッピングした『春きしめん』が登場しますよ」。さらに、「今はまだ開発中なんですが、マーラーマーボー麺も発売予定です」とのこと。

それ、一歩間違えれば純中華の刀削麺(とうしょうめん)だよ!というツッコミはさておいて、この「東北人ならではの、先入観のないきしめん改革」が、きしめんの未来を大きく広げていることは間違いない。

ちなみに、名古屋駅在来線のホームにも立ち食いきしめんの店はある。ただし、こちらは半分立ち飲み屋化しているので、飲んべえな人向けかも!

●information
名代きしめん 住よし (JR名古屋駅3・4番ホーム店)
愛知県名古屋市中村区名駅1-1-4 名古屋駅構内 JR名古屋駅 3・4番ホーム