アクビがうつる理由を解明!

アクビをしている人を見て、つられてアクビが出てしまった経験はありませんか? 別に眠くないときでも、なぜかつられてしまいます。この不思議な現象はどうして起こるのでしょうか。

その理由を、首都大学東京 人間健康科学研究科 ヘルスプロモーションサイエンス学域 北一郎先生にうかがいました。

どうしてアクビがでるのか?

――アクビは眠くなったときに起こるという印象がありますが、そもそもどういった生理現象なのでしょうか?

「実はアクビの話をするとき、そこから質問される方がとても多いんですよ。身近な現象でありながら、なぜ起こるのかよく知られていないですし、実際詳しくわかっていないことでもあります。

例えば、運転中に眠くなり、寝てしまうと事故を起こして危険ですよね。脳がそういった危険を感じて、アクビをすることで覚醒(かくせい)を促していると考えられます。

また、時には体調不調でアクビが出ることも。『生アクビ』と呼ばれているものですが、脳が酸素不足になったときに、からだや脳の不調を知らせるサインとしてあらわれるといわれています」

――体調不良以外のアクビの場合は、脳の中ではどんなことが起こっているのですか?

「アクビがでるということは、脳機能が低下しているということ。アクビをすることで、覚醒物質であるセロトニンやノルアドレナリンが発生し、脳の覚醒レベルをあげます。

また、2次的な作用として、血圧を調整したり、アクビにより涙がでることで目を刺激したりすることなども考えられますね」

親密な関係ほどアクビがうつりやすい!?

――ふだん、何げなくアクビをしていましたが、体の中では様々なことが起こっているのですね。では、アクビがうつるのは、どうしてなのでしょうか?

「アクビがうつる理由としてはいくつか説があるのですが、その中のひとつに、人間同士の共感能力が関係しているというものがあります。

アクビは一種の情動(生まれながらもつ恐怖・驚き・怒り・悲しみ・喜びなどの感覚)反応です。人間は共感能力に関係する前頭葉が発達しているため、相手のアクビを見たり聞いたりするだけで、『あの人はいま危険な状態なんだ』ということが伝わる。そのことによって刺激をうけ、アクビがうつると考えられています。反対に、相手に共感できなければ、どんなにアクビを見てもうつりません」

――前頭葉の発達が関係しているということは、発達していない動物にはアクビはうつらないんですか?

「人間に近いサルでは、アクビがうつることがわかっています。それと、共感する能力が発達していない幼児には、あくびはうつりにくいと考えられていますね。また、最近の研究では、犬や猫にはあくびがうつりそうだといわれているんですよ」

――犬や猫にアクビがうつるということは、人と犬や猫の間にも共感能力が?

「アクビの伝染により共感できることが実証できた、とはいえないですが、可能性はあると思います。特に犬や猫は、長い時間、人間と緊密な暮らしを続けていますからね」

犬や猫が、自分の気持ちを理解しているかもしれないとは、ペットを飼っている方には、この上なくうれしいことではないでしょうか。また、人間同士でも、共感するかしないかによって、アクビがうつる度合いは違ってくるそうです。親密な相手のアクビの方がうつりやすい、ということかもしれませんね。

なお、北先生いわく、アクビが頻繁にでるときは、脳障害や脳出血などの前兆であることも考えられるので、注意が必要だそう。みなさんも、ふだん何げなく出ているアクビに、気をつけてみてはいかがでしょうか。

(OFFICE-SANGA 梅田丸子)