2月に公開されてからユーザーを急増させているiPhone用メールアプリ「Mailbox」を、オンラインストレージサービスのDropboxが買収した。3月15日 (米国時間)に、DropboxとMailboxがそれぞれのブログで明らかにした。

Mailboxは「Inbox zero. Daily. (いつも受信箱を空に)」というユニークな利用コンセプトを提案している。メールの処理を効率化するスヌーズ機能を備え、スワイプを使って受信箱内のメールをすばやく処理できる操作性の良さも評価されている。2月7日にApp StoreからMailboxアプリを入手できるようになったが、サービスを安定させるために、登録順に少しずつサービス提供ユーザーを増やしていく方式が採用された。すると、順番待ちのユーザーがすぐに数十万人に増加したことも大きな話題になった。

Mailboxの受信箱。右にスワイプして画面の途中(緑色状態)で離すとアーカイブ、さらに右端(赤色になってから)で離すと削除

すぐに処理する必要のないメールは「今夜」「明日」「週末」というようにスケジュールを決めて一時的にメールを受信箱から消しておく(スヌーズ機能)

Mailboxの人気が急上昇したのには、もう1つの理由がある。昨年7月にGoogleが、Mac用およびiPhone用のメールアプリを提供していたSparrowを買収したことだ。Sparrowは標準メールアプリの代替メールクライアントの代表的な存在になっていたが、買収後は既存製品のサポートをセキュリティパッチに絞り込み、Sparrowの提供が事実上終了した。Mailboxは”ポストSparrow”を探していたiPhoneユーザーの心に響き、ベータ時代からその存在が口コミで広がっていた。

Dropbox CEOのDrew Houston氏とCTOのArash Ferdowsi氏は、公式ブログで「多くのユーザーと同じように、われわれもMailboxを見てすぐに気に入った」と述べている。Mailboxの開発チームとのミーティングで、お互いに「生活の中で当たり前になってしまっている問題を解決したい」という同じ思いを持っていることを確認できたという。「Dropboxはユーザーのフォルダやハードドライブの代わりではない。それらをより良いものにする。同じようにMailboxもEメールの代わりではない。それをより良いものにしている」と述べている。

一方Mailboxチームは、サービス提供という観点からDropbox入りを説明している。Mailboxの一般公開から約1カ月でサービス容量は2000倍に増加し、現在1日に6000万通以上のEメールを届けている。それでも順番待ちを解消できない。全ての人が自由にMailboxを利用できるようにし、またGmail以外のメールサービスもサポートするためには14人の開発チームでは足りない。Mailboxは、Dropboxのミッションにうまくフィットする。またサービスのスケーリングという点でDropboxは多大な経験を持つ。「Mailboxがなくなったりはしない。より早く成長する必要が生じ、それを実現するためにはDropboxに加わるのが最善の方法だと考えた」としている。

GoogleがSparrowを買収した時に、SparrowがiPhone用の人気メールアプリだったことが、GoogleにとってSparrowの価値を高めたと指摘する声があった。あらゆるプラットフォームをサポートするのがDropboxであり、そのDropboxにMailboxが加わることはユーザーにとってMailboxの価値が高まる買収と言える。