国立循環器病研究センター(国循)は3月15日、緑茶やコーヒーを摂取する割合が高い人は摂取しない人に比べて循環器疾患、脳卒中、脳梗塞、脳出血の発症リスクが低くなるという研究結果を発表した。

同成果は国循や国立がん研究センターなどの共同研究によるもの。詳細は2013年3月14日発行の「Stroke」オンライン版に掲載された。

今回の研究対象となったのは、1995年に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、1998年に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2013年時点のもの)の管内に居住している45~74歳のうち、循環器疾患やがんの既往のない追跡可能な男性3万8,029人、女性4万3,949人で、研究開始時に緑茶を飲む頻度に関する質問への回答から、「飲まない」、「週に1~2回」、「週に3~6回」、「毎日1杯」、「毎日2~3杯」、「毎日4杯以上」という6つの群に分けて、その後の脳卒中および虚血性心疾患発症との関連分析が行われたほか、同様にコーヒーを飲む頻度に関する質問への回答から、「飲まない」、「週に1~2回」、「週に3~6回」、「毎日1杯」、「毎日2杯以上」という5 つの群に分けて分析が行われた。

2007年末までの追跡の結果、3,425人の脳卒中発症と910人の虚血性心疾患発症が確認された。分析の結果、緑茶を飲まない群を基準とした場合、循環器疾患と脳卒中については毎日2~3杯と4杯以上の群の発症リスクが14%-20%低く、脳梗塞については日に4杯以上の群で14%低く、脳出血については毎日1杯以上の群で22%-35%低いという結果を得たほか、コーヒーを飲まない群を基準とした場合、循環器疾患と脳卒中については、週に3~6回、毎日1杯、毎日2杯以上飲む群の発症リスクが11%-20%低く、脳梗塞については週に1~2回以上の群で13-22%低い結果を得たとする。

さらに、緑茶とコーヒーの摂取を組み合わせてみた場合、緑茶もコーヒーも飲まない群に比べ、緑茶を日に2杯以上またはコーヒーを日に1杯以上摂取する群で、循環器疾患、脳卒中、脳梗塞、脳出血の発症リスクが有意に低下することが確認され、特に脳出血については、緑茶とコーヒー摂取の相互作用がみられ、より低いリスクとなることが示されたという。

この結果、緑茶、コーヒーともに、多く摂取する群で脳卒中リスクの低下がみられたものの、虚血性心疾患発症リスクとは有意な関連がみられなかったとのことで、研究グループでは緑茶にはカテキンなどの抗酸化作用、抗炎症作用、抗血栓作用、血漿酸化防止と抗血栓形成効果などによる複数の血管保護効果がみられるが、緑茶と血圧との関連に関する文献には賛否両論があり、また文献が少ないため今後の研究が必要とされるとコメント。また、コーヒーの先行研究では、摂取と脳卒中との関連性がみられないという研究などがあるため、結果が一致していないほか、虚血性心疾患との関連についても一致した結果が得られておらず、今回の研究でも、日に2杯以上の摂取で年齢調整で虚血性心疾患のリスクとして見られたが、循環器疾患に関連する別の要因の影響を考慮して、分析を行うとその関連性が消え、米国のコホート研究の結果と同様であることが示されたとする。これについて研究グループは、コーヒーをたくさん摂取する群には喫煙者が多く含まれているため、年齢調整で見られた関連性が、喫煙で調整されると見られなくなったものと考えられると説明している。

また、コーヒーに含まれるクロロゲン酸には血糖値を改善する効果があると言われており、初期の調査では、コーヒー摂取頻度が高いと脳梗塞の危険因子である糖尿病の既往歴の割合が低い傾向にあり(糖尿病既往歴の割合は、コーヒーを飲まない群で7.1%、日に2杯以上摂取する群において3.5%)、コーヒー摂取頻度が多いと脳梗塞の発症が低く抑えられていることが推察されたとも説明している。

なお、今回のアンケートでは日本茶では「せん茶」と「番茶・玄米茶」の摂取頻度について、コーヒーについては「缶コーヒー以外」と「缶コーヒー」の摂取頻度についてそれぞれ尋ねているが、今回の分析に用いられたあのは日本茶ではせん茶のみ、コーヒーでは缶コーヒー以外、でカフェインとカフェインレスを分けていないとしている。

緑茶・コーヒー摂取と脳出血発症リスク。調整変数は性年齢、喫煙、飲酒、Body mass index、糖尿病既往歴、降圧剤服用、習慣的な運動、果物、魚、摂取エネルギー、地域で行われた。(*:P<0.05 緑茶およびコーヒーの両方共摂取しないを基準(多変量調整))