副業で得た収入は確定申告で計上するべき?

エッセイ応募での謝礼や副業での収入も、節税の対象になる可能性があるというのはご存じですか? 意外と身近に「節税の種」は転がっているかもしれません。確定申告の前に、もう一度自分の収入を見直してみませんか?

年収300万円台なら賞金で還付の可能性も?

趣味を生かしてエッセイを投稿、又はコンクールに応募をしている人もいると思います。投稿やモニターでの謝礼、コンクールの賞金など、年末調整済みの会社員は本業ではない副収入が年間20万円以下ならば、確定申告の必要はありません。ですが、賞金や謝礼が支払われる際にもともと10%税金を徴収されている場合で、本業である会社員での給与所得が低ければ、副収入で徴収された10%の税金は払いすぎの場合があります。目安としては本業の収入が300万円台の人なら、還付される可能性もあります。

副業収入は事業所得と認められるとお得に

懸賞応募以外でも、空き時間や趣味を生かして収入を得ること、つまりは「副業」を考える人が増えているようです。副業について、ファイナンシャルプランナー(FP)で日本SOHOセンター副理事長の吹田朝子さんにお話を聞きました。

副業を考え始めるキッカケとしては、大きくわけて2つあります。1つ目は、「会社のお給料が減ってしまってどうしよう」「もう少し自由になるお金が欲しいな」といった現実的なお金の問題から考え始めるケース。2つ目は、趣味としてやり始めたらハマり、「これでお金が稼げるようになるといいな」と夢を起点に考え始めるケースです。

吹田さん自身、18年前にFPとして活動を始めた初年度は、会社員としての給与収入とFPとして原稿を書いて得た収入(年間で19万円)がありました。前述した通り20万円以下の副収入なので確定申告の必要はありませんが、19万円を「事業所得」にするか「雑所得」にするか、処理の仕方を税務署に相談に行ったそうです。

事業所得とは、「利益を得ることを目的として継続的に行う経済活動」を言いますが、結論から言えば、副収入は「事業所得」として認められればお得な場合があります。それは、「事業所得」が赤字だった場合、給与所得といった「他の所得」と通算ができますが、「雑所得」の場合は赤字だったとしても他の所得と通算できないからです。

事業の場合は必ず経費がかかり、収入と経費は相殺できます。例えばFPとして活動する場合、打ち合わせをするために入ったカフェのお金は“会議費”、人脈を広げるために誰かと会食をしたお金は“交際費”、本や雑誌を買ったら“書籍代”として計上できます。また、自宅で仕事をする場合は、自宅の電話代や水道光熱費の何割かは経費になる場合があります。

こういった経費を実際の収入から差し引けば、「収入はあるけれど事業所得としては赤字」ということもありえます。所得税は文字通り「所得」に対してかかる税金ですので、赤字の副業と給与収入を通算した方が税金は安くなる可能性があります。

事業所得で確定申告をする目安とは?

ただし、最近、上記の仕組みを利用した脱税指南が問題となったこともあるので、注意は必要です。そこで、国税局に「会社員が副業を事業所得として確定申告する目安」を伺ってみました。

「事業所得としての副業は、営利性・有償性・継続性・反復性があるか、精神的あるいは肉体的労力の程度や人的・物的設備があるか、また、社会的地位・生活の状況などを考慮して判断します。加えて、その事業が生活の糧となるものか、一般的に職業として認知できるかも判断材料となります」(国税局)。

事業所得として申告しても、こうした要素を客観的・総合的に判断した結果、事業所得ではなく雑所得として判断する場合もあります。一般的に給与所得者の副業は、雑所得とみられるケースが普通のようです。

なお、事業所得となった場合、別途、地方税(事業税)が課されることもあります。節税のために副業をするというのは現実的ではないようですが、これからの新しい仕事として副業を考える際、その情報収集に本を買ったお金を「経費として見る」などという視点に切り替えることは大切です。

「なんとなく使っていたお金を、自分で経費として計上することでマネー管理の意識が変わり、生活に張りが出てくる人が多いですね」と、吹田さんは多くのSOHO(個人事業者)の人たちを見て感じたようです。

プロフィール : 吹田 朝子(すいた ともこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、1級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引主任者。一橋大学卒業後、保険会社の企画・主計部門などを経て1994年よりファイナンシャルプランナーとして独立。STコンサルティング代表。個人事業者のための社会的基盤の整備など、各種相談活動を行う日本SOHOセンターの副理事長も務めている。著書に『自動的にお金が貯まる習慣』(洋泉社)などがある。

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