日立製作所は3月12日、あらかじめ携帯情報端末で指定した位置へ自律走行により移動可能な機能「任意地点自律送迎機能」を備えた1人乗り移動支援ロボット「ROPITS」を開発したことを発表した。

従来、ロボットの移動に必要となる環境形状地図を作る場合、GPSやレーザ距離センサ、ジャイロセンサ、エンコーダなどのセンサを搭載することで、周囲の物体との距離情報や緯度・経度・標高などの情報を取得する必要があった。しかし、それらのセンサで取得される標高データば誤差が大きく、位置推定に使用するためには、より精度の高い標高データが求められていた。そこで日立では、2011年より茨城県つくば市のモビリティロボット実験特区に参画し、実際の歩道を使った走行実験を通じて、移動支援サービス機能の利便性向上と自律走行機能の信頼性向上を図ると共に、移動支援ロボットが歩行空間などで人間と共生できるかという観点から調査・研究を進めてきており、今回の研究では、歩道の標高情報を国土地理院の電子地図や精度の良いRTK-GPSなどから取得し、個別に取得した緯度・経度、標高の情報と同じ座標系に融合することで、実際の環境形状を再現する3次元環境形状地図を作成したという。

また、同特区の市街地の広域な歩道地図を作成するために、独自に開発した複数地図高精度融合機能を用いることで、約18kmにわたる同特区の歩道の3次元環境形状地図を作成。これによりROPITSは、座標を正確に認識して移動することが可能となり、利用者は携帯情報端末の電子地図上で位置を指定するだけで、市街地の広い範囲における移動が可能となるほか、立体交差部分など高さの異なる歩道や建屋内での異なる階の歩行空間へのアクセスが可能になるという。

さらに、搭載されているレーザ距離センサとステレオカメラにて測定した3次元環境形状情報を融合することで、歩行者や路面凹凸を見逃すことなく検出することができることから、広い場所では速度を保ちながら障害物から離れ、狭い場所では障害物の近くを減速して走行するほか、歩行者が接近した場合には自動停止するなど、さまざまな障害物が存在する歩道をスムーズに移動することが可能になっているとする。

加えて、搭乗者の安全性向上に向け、衝撃吸収のためのサスペンションと、車輪の上下位置を自由に制御できる駆動装置を直列に配置しており、これにより車体の状態を常に水平に保つことが可能となり、うねりや凹凸のある歩道でもバランスを崩さずに、安定して走行することを可能としたという。

実際につくば特区の歩道にて送迎実験を行ったところ、目的地の座標(緯度・経度)に対して誤差1m以内に到着することが確認されたという。そのため同社では今後、今回の機能を活用した実験を同特区にて継続的に行い、自律移動技術および移動支援サービス機能のさらなるレベル向上を進めるとともに、物品の自動配送、ロボットの利用効率を高める自律配車(無人迎車、乗り捨て回収、無人回送)など、さまざまな移動支援サービスに向けた応用技術を開発していきたいとしている。

1人乗り移動支援ロボット「ROPITS」と、携帯端末の予約画面の例