出産一時金は加入している保険によって変わる

公的サポートとして、前回、妊娠時にもらえる補助金に関して紹介しました。今回は出産時にもらえる補助金について、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに聞いてみました。

出産育児一時金は42万円以上

出産は病気ではないので、健康保険が使えないのはご存じでしょうか? 出産の状況や病院によって違いはありますが、一般的に出産費用の平均は50万円前後だと言われています。費用は全額自己負担となりますが、その時に頼りになるのが出産育児一時金です。

出産育児一時金とは、健康保険から子供ひとりの出産につき42万円がもらえる制度です。「出産時に」ではなく、「子どもひとりの出産につき」なので、双子の場合は1回の出産で2倍の84万円、3つ子の場合は3倍の126万円が最低でももらえます。

「最低でも」と書いたのは42万円というのは最低基準で、例えば東京都港区のように60万円までなら実費を支払ってくれる自治体(国民健康保険)もありますし、勤務先の健康保険が健康保険組合であれば、42万円以上(多いのは5万円上乗せして47万円など)の給付がある場合もあります。まずは、自分がいくらもらえるのかを調べてみましょう。

ただし、出産育児一時金は、下記どちらかの条件を満たし、かつ、妊娠4カ月(85日)以上で出産した人が対象となります。

・自分が健康保険(もしくは国民健康保険や共済組合)に入っている
・夫の健康保険の被扶養者になっている

出産一時金は保険者に申請後、2週間から1カ月程度でもらえます。また、残念ながら流産や死産してしまった場合でも、妊娠4カ月(85日)以上であれば、出産育児一時金の対象となります。

出産育児一時金から出産費用を払うこともできる

筆者が初出産した13年前は、自分で出産費用を払って、事後申請で出産育児一時金を受け取るシステムでした。けれども今は、健康保険から病院側に直接支払ってもらうことが主流になっています。こうすれば、いったん自分で全額を立て替え払いする必要はないので、出産費用から出産育児一時金を引いた差額を用意しておけばよいのです。出産育児一時金より出産費用が少ない場合は、申請すれば健康保険から戻ってきます。

病院側が出産育児一時金を受け取るシステムを「直接支払制度」、あるいは「受取代理制度」と言います。「直接支払制度」を利用できる病院では、妊婦検診を受けている間に、病院側から書類へのサイン(書名、パートナーの署名が必要なケースもあり)を求められます。

「受取代理制度」は、「直接支払制度」は利用できないけれど、妊婦が健康保険に手続きをすれば出産一時金を病院側が受け取れる制度です。「直接支払制度」と違う点は、妊婦自身が健康保険に手続きを行わなければいけない点です。

出産時の「オトク」を逃さないためには?

上記ふたつの方法は、大金を用意しなくてもいいという点で楽ではありますが、この機会を活用するという点では、事後申請(出産費用を払い、その後出産一時金を受け取る)を検討してみる価値はあります。

理由は2点あります。1点目は、病院によっては「直接支払制度」を利用するのに、「事務手続手数料」がかかる場合があるからです(病院によっては手数料無料の場合もあり)。2つ目は、最近はクレジットカードで支払いができる病院も多いので、事後申請を選択して病院への支払いをカードですれば、ポイントが多く貯(た)まる点です。

出産費用の平均は50万円前後ですので、「最低でも42万円分」のポイントはそれなりに大きいと思います。ちなみに「事後申請」は、書類を提出してから入金までの期間が1カ月程度です。クレジットカードの支払いを選択する場合は、クレジットカードの締切日と支払日をチェックしておくことをおすすめします。

監修者プロフィール : 畠中 雅子(はたなか まさこ)

大学時代よりフリーライター活動を始め、1992年にファイナンシャルプランナー(FP)になる。FP資格取得後は、新聞・雑誌・ウェブなどに20本前後の連載を持つほか、セミナー講師や金融機関へのアドバイザー業務などを行っている。また、3児の母として生活実感あふれるマネーアドナイスに定評があり、「子どもにかけるお金を考える会」「高齢期のお金を考える会」を主宰している。書籍に『結婚したら知っておきたいお金のこと』(海竜社)『子どもにかけるお金の本―この1冊で確実に準備!』(主婦の友社)など、約50冊にのぼる。

「FP畠中雅子のときどき日記」