浜松ホトニクス(浜ホト)は1月29日、MEMS技術により、光干渉計と赤外線検出素子の光学機構を指先サイズにまとめた超小型フーリエ変換型赤外分光器(FTIR)エンジンを開発したと発表した。

超小型FTIRエンジンは、マイケルソン干渉計と赤外線検出素子の光学機構をMEMSチップにまとめたもので、FTIRを小型で低価格にするもの。開発品は、電気制御系とともに装置に組み込める筐体にまとめたもので、パソコンにUSBで接続することで、赤外分光器としてスペクトル測定や吸光度測定が可能。1.1~1.7μmの範囲において波長分解能10nmを達成している。今後は、2~10μm帯まで感度波長を伸ばし、S/N比などの基本性能も高めていく予定という。

FTIRでは複雑な信号処理を必要とするが、近年では、低価格なパソコンで十分な信号処理速度が得られるようになり、価格やサイズを決定する要素は、信号処理以外の部分に大きく依存するようになってきた。これまで、FTIRは据置き型で高価な分析装置だったが、同技術により、自動車運転時での飲酒などの呼気判別やスーパーマーケットでのプラスチックの選別、農作業現場でリアルタイムな成分測定が可能になるなど、これまで大型プラントや研究室で行われていた測定が、身近な場所で簡易に行えるようになることが期待される。

なお、同技術は、アナログや混合信号ICのファブレスメーカーであるエジプトSi-Ware Systemsと提携し、MEMS技術をライセンス契約して共同開発したものだという。また、新たな応用の可能性を見つけるため、同エンジンを装置に組み込み可能な小型で安価なFTIRにまとめ、6月から国内外の各種装置メーカーにサンプル出荷を開始し、2013年の秋には「MEMS-FTIR」として製品化することを予定している。

MEMS-FTIRエンジンの内部構成

超小型FTIRエンジン(左上)と静電アクチュエータの動作原理(左下)、マイケルソン干渉計部のSEM画像(右)