インフルエンザに関して、年齢別にみた推計受診者数の推移

インフルエンザは毎年12月から3月にかけて、流行のピークを迎える。第一三共は今冬のインフルエンザの傾向と治療最前線について、1月11日にメディア向けにワークショップを実施した。

受診者は小児が多いが、高齢者は重病化するリスク大

川崎医科大学の中野貴司教授

ワークショップでは、川崎医科大学の中野貴司教授が登壇。まず、今冬のインフルエンザの動向として、昨年度(2011年~2012年)に引き続きAH3亜型(A香港型)が最も多く検出されていると発表した。また、流行の始まりは昨年度より遅い傾向にあるが、1月上旬以降は例年通り流行が急速に拡大し、1カ月もすればピークを迎えるという。

昨年度におけるインフルエンザの流行状況をみると、基幹定点医療機関(※1)からの報告では、重病患者(※2)は1,487人、入院患者は1万1,118人だった。また、インフルエンザの外来受診者は約1,648万人であり、国民10人にひとりは医療機関に受診しているという計算になる。一昨年度での外来受診者は約1,159万人だったことを考えると、患者数は拡大していることがうかがえる。

また、医療機関を受診した患者を年齢別に見ると、0歳~14歳までの小児が多いが、入院・重症患者数を見ると、60歳以上の高齢者の比率が高まっている。この状況に対して中野教授は、「高齢者がインフルエンザにかかった場合、重病化や、肺炎などの呼吸器合併症などによって死亡するケースがあるため、特に注意が必要」とコメントした。

インフルエンザに関して、年齢別にみた入院・重症患者数(2011年~2012年)

※1)全国約500カ所の機関で、入院患者数および重病患者数は全国の総数ではないため、総数はもっと多い
※2)入院時において、集中治療室に入室、人工呼吸器の使用、頭部CT検査や脳波検査などの頭部検査を実施・実施予定の患者

感染を予防する4つの対策

では、インフルエンザにかからないようにするにはどうしたらいいのか? 中野教授は以下の5点を指摘した。

手洗い、うがい
付着したインフルエンザを物理的に排除する

人ごみへの外出を控え、外出時にはマスクを着用
ウイルスとの接触や身体への侵入を回避する

適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下する

十分な休養と栄養摂取
身体の抵抗力を高める

流行前のワクチン接種

ただ、インフルエンザワクチンはポリオワクチンなどと比べると、有効率は下がるという。加えて、どの程度効果が見込めるかは、発症予防か死亡回避かという指標と、その患者の年齢によって有効率が変わってくる。例えば、発病予防を指標とした場合、小児の有効率は30%前後だが、高齢者の有効率は34~55%と報告されている。

インフルエンザワクチンの予防効果の比較

今使われている抗インフルエンザウイルス薬とは?

インフルエンザを発症してしまった場合、国内ではどのような治療がなされるのか。抗インフルエンザウイルス薬には、「タミフル」(薬品名は「オセルタミビル」)や「リレンザ」(薬品名は「ザミナビル」)、「イナビル」(薬品名は「ラニナミビル」)などがある。

「タミフル」や「リレンザ」は1日2回内服、もしくは吸入し、5日間の治療期間が必要だが、「イナビル」は気道に直接作用する吸入薬であり、単回投与で治療が完結する。また、平均解熱時間はA型インフルエンザウイルスでは26.4時間(「タミフル」は27.3時間、「リレンザ」は28.8時間)、B型インフルエンザウイルスでは39.1時間(「タミフル」は40.2時間、「リレンザ」は36.6時間)だったという(※3)。

「タミフル」に関して、因果関係は不明であるものの、10歳以上の未成年患者が服用後に異常行動を発現し、転落などの事故に至った例が報告されている。そのためこの年代の患者には、原則として「タミフル」の使用が差し控えられている。一方「イナビル」は、小児を対象とした臨床試験および市販後に実施したアンケ-ト調査にて、5歳以上が適切に吸入できると示されているが、吸入できるならば年齢制限はない。

「イナビル」(薬品名は「ラニナミビル」)は吸入して気道に直接作用する

※3)迅速診断で判定した、ウイルス亜型別の各種抗インフルエンザ薬の平均解熱時間