横浜市立大学は1月16日、国立成育医療センター、京都大学iPS細胞研究所との共同研究により、がんの発症、再発、転移、薬剤耐性の元と考えられている「がん幹細胞性質」を有する細胞株の樹立に成功したと発表した。

成果は、横浜市立学大学院 医学研究科 微生物学教室の梁明秀 教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、1月14日付けで米国がん専門科学誌「Oncogene」電子版に掲載された。

今回開発された細胞株は、自己再生能や多分化能などのがん幹細胞の性質を保持しながら、通常の細胞培地で簡便に培養が可能で、免疫不全マウスに移植すると上皮系や間葉系を含む複数種のがん細胞が混在した腫瘍組織の形成が見られた。

同細胞株はヒトの上皮系非がん細胞由来の初めての人工がん幹細胞であり、がん幹細胞を標的とした薬剤スクリーニングやバイオマーカー探索への活用が期待されている。

がんの治療には、化学療法、免疫療法、放射線療法などでがん細胞の死滅化を行うが、再発することが問題になっている。その原因は、これらの治療法では通常のがん細胞を死滅させることはできるが、微量存在するがん幹細胞を完全に死滅化させることはできず、それが再活性化してしまうからだ。がんを根治するには、このがん幹細胞を死滅させる薬物の創生が望まれているのである。

しかし、従来の手法では腫瘍組織からがん幹細胞のみを取り出して培養したり、がん幹細胞の性質を有する細胞株を樹立したりすることが困難であったため、今までがん幹細胞を標的とした治療薬の開発ができていなかった。

梁教授らは不死化されたヒト乳腺上皮細胞を用い、それにiPS細胞開発で発見された細胞のリプログラミングを行う山中因子を導入後、1度初期化した細胞を組織がん幹細胞レベルまで分化誘導させることにより、多種類の組織型がん細胞に分化できる新たながん幹細胞株の樹立に成功した次第だ。

梁教授らが確立した技術は、乳腺上皮細胞のみならず、前立腺上皮細胞や皮膚細胞からもがん幹細胞株の樹立に成功しており、今後は各組織由来のがん幹細胞株の樹立を行い、がん幹細胞株のライブラリーを作製することを目指すという。

今回のがん幹細胞株を活用することで、これまで技術的に難しかったがん幹細胞の性状解析やバイオマーカー探索、さらにはがん幹細胞の自己増殖や未分化能を標的とする新たな薬剤の開発などに結びつく可能性があると、梁教授らはコメントしている。

なお、今回樹立したがん幹細胞株については、製薬企業などとの共同研究を通して新規の抗がん薬の創出に寄与することを期待すると共に、細胞株自体の販売についても現在企業と協議を行っている最中だとしている。

今回樹立された人工がん幹細胞株