衛星TVサービスの米Dish Networkが1月8日(現地時間)、現在米Sprint Nextelにより買収が進められている米Clearwireの敵対買収を発表した。米Wall Street Journalなどが同日報じている。買収金額は1株あたり3.30ドルで、Sprint側の提案額より11%、8日の株取引終了時点の同社株価より13%ほど高い水準となる。これを受け、現在Clearwire株は原稿執筆時点での時間外取引で3.18ドルと終値から8.9%ほど急上昇している。

衛星TVサービス事業者が、WiMAXや将来的なTD-LTEサービスを提供する無線ブロードバンドプロバイダのClearwireを買収するというと奇妙な話に聞こえるが、

同社は昨年2012年12月に米連邦通信委員会(FCC)によって自身が持つ通信衛星の帯域を「携帯電話サービス」に転換する認可を受けており、近い将来にも地上のアンテナと衛星通信を組み合わせたハイブリッド型の衛星携帯電話サービスを開始するとみられている。ハイブリッド携帯を実現するにはMVNO等で既存の提携パートナーを探す、あるいは自らサービスインのための周波数獲得が必要であり、Clearwire買収提案というのは理にかなったものとなる。Dishでは、Clearwireのボードメンバーとの話し合いの場を持つ意向だと説明している。

Clearwireについては、現在同社最大の株主であるSprintが残り49%の株式をすべて取得して完全子会社化を進めているといわれている。これにより、2014年以降にサービスインするといわれるTD-LTEネットワークのほか、同社が全米に抱える周波数資産を獲得できる。こうした動きはSprint買収を行った日本のソフトバンクの意向もあるといわれ、もともと同社によるSprint買収計画の中にClearwireの完全子会社化があり、Sprint買収の過程で流れた資金を元に設備投資やClearwire買収といった一連のアクションが可能になった。だがDishの出現により買収金額は跳ね上げられ、Clearwire買収のハードルが高くなった。Dishの提案が、現在米国で進みつつある携帯業界再編でライバルへのあくまで牽制の位置付けなのか、あるいは本格的に買収を検討しているのかは不明だが、これを機に買収金額引き上げを狙う株主らも多数出現し、しばらくは混乱が続くとみられる。最終的にはClearwire経営陣の判断に委ねられるが、ソフトバンクやSprintら当初の意図よりも買収が難しくなったことは間違いないだろう。

(記事提供: AndroWire編集部)