伊勢神宮の近く、浦之橋商店街の「軽トラ市」は赤丸急上昇中の人気マーケット(写真提供 浦之橋商店街振興組合 ※以下すべての写真も同様)

今も昔も年間通して多くの参拝客が集う、ご存じ三重県の「伊勢神宮」。周辺には当然、その人出に目をつけた観光スポットが多数存在する。中でも最近赤丸急上昇の人気を博しているのが、伊勢神宮にほど近い浦之橋商店街で行われている「うらのはし軽トラ市」だ。

野菜、生花、魚介など新鮮な品が連なる

うらのはし軽トラ市は、毎月第3日曜日の午前8時から正午まで行われている。伊勢神宮のにぎわいとは裏腹に、いつしかシャッター街になりつつあった同商店街に、客足を取り戻すために始まったイベントだそうだ。

2年ほど前に始まり、2012年12月で29回を数える名物イベントに成長した。朝8時、地元はもちろん伊勢志摩のあちこちから、様々な物品を荷台に積んだ軽トラがブイ~ンと集まってくる。そして商店街の軒先に乗りつけたと思いきや、荷台からコンテナを降ろして店(たな)を手際よく広げ始めるのだ。

コンテナの中に入っているのは、四季折々の野菜や生花、魚介類を筆頭に実に多様な品だ。日曜朝の商店街に響きわたる「らっしゃーい!」の威勢のいい声が響き、一気ににぎやかな雰囲気に包まれる。

驚きの新鮮な海鮮も手にはいる。写真はその場で干し物にされたタコ

気候が温暖で、海も山もあって豊かな自然がウリの伊勢志摩。軽トラ市に集まる品々はどれも、自然の恵みがぎゅっと凝縮された逸品だ。特に野菜や魚介類の鮮度はこの上ないほど極上。魚の目がまだ生き生きしてる! しかもお値段はリーズナブルと、お得感も満点だ。

冬には焼き牡蠣(かき)も! 何度行っても新しい発見がある

初めての人はまず、店の呼び込みに応えるのをぐっとガマンして、ぶらぶらとウインドーショッピングをしよう。そうすると、それぞれの個性が見えてくる。特に鮮魚は、漁師が朝から漁に出てとってきたものが多いので、どれを選ぶかが重要だ。スーパーの鮮魚コーナーのように、「どれも同じもの」ではないのだ。じっくり目利きするべし!

売る側もその場でタコを干して干物にするなど、実にフリーダムなスタイルを貫いている。手作りパンや手作り豆腐、そしてお弁当……。冬には焼き牡蠣が登場することもあるというからびっくりだ。

常連の出店の他、毎回のように新規店も登場するから、何度行っても新しい発見がある。リピーターのお客ともなると、始まる前からお目当ての軽トラの登場を今か今かと待っているのが面白い。そして、軽トラが来たそばから商品をガンガン買っていくのだ。すごい!

作りたての「タマゴの太巻き寿司」なんかも入手できる

浦之橋商店街振興組合の山川理事長によると、実はこれまでも、毎月第1・3日曜日には「日曜市」をしていたという。しかし「日曜市がマンネリ化して、何か新しいことをしないと」と、第3日曜を軽トラ市にチェンジしたそうだ。

市開催の始まりはチラシ配りから

それにしても軽トラは、遠くは熊野灘に面した志摩市和具からもやってくる(けっこうな距離にも関わらず、だ!)。どうやって軽トラ市の開催を周知したのか。「それは、チラシを農協や漁協にお配りして、出店をお願いしたからですよ」と山川理事長。

アナログな方法だけど、足で稼ぐのは一番確実だ。こういった地道な努力が実り、少しずつ認知されていったそうだ。

ぶらり歩きながら軽トラの荷台を眺める、この楽しさに全国から人が集まる

「とはいえ、最初から行程が決まっているツアー客にはなかなか認知してもらえないですね。そこはこれからの課題です」と山川さんは言うが、フリー観光で伊勢を訪れて、たまたま立ち寄ったという観光客には上々の評判だ。

ただ買うだけでなく、店の人とのトークも楽しめるのは朝市ならでは。時には豚汁の振る舞いや餅まきなども行われるそうで、旅の思い出作りにぜひとも立ち寄りたい。

「高山や輪島の朝市のように、軽トラ市を伊勢志摩観光の名物にしたい」と大きな夢を語る山川さん。このフレンドリーな雰囲気なら、その夢の実現はそう遠くなさそうだ。

●information
浦之橋商店街「うらのはし軽トラ市」
伊勢市常磐2-6-22