殻つきのままスコップで豪快に。復活した松島の牡蠣小屋

東日本大震災から間もなく2年。今、東北の海はたくましく再生を始めている。それに合わせて、牡蠣(かき)の養殖施設の復旧・整備も進められている。牡蠣と言えば三陸の冬の味覚! 食べるなら今がベストのシーズンだ。しかも、現地の「牡蠣小屋」で食せば、よりおいしくいただけるに違いない……。

「松島や ああ松島や 松島や」で有名な日本三景のひとつで、三陸海岸で最も名高い観光スポットである宮城県の松島。豊かな松島湾の海で育まれた松島牡蠣は、海のエキスが凝縮されたぷりぷりの味覚として知られているが、この地の牡蠣養殖施設も、震災に寄る津波で大きな損害を受けた。

以来、松島の牡蠣はどうなったのだろうか?と思っていたのだが、先だって、松島観光協会が直営する牡蠣小屋が、今年も無事オープンしたとのグッドニュースが入ってきた。

東北随一の観光スポット、松島においしい笑顔が戻ってきた

例年より約2カ月遅れの12月1日に、牡蠣小屋はオープンしたそうだ。松島観光協会によれば、松島の牡蠣養殖棚は急ピッチで復旧が進められていたが、この夏の異常高温で牡蠣の多くが死滅してしまったらしい。このショックで一時は営業を断念したが、近隣の石巻から養殖牡蠣の提供を受けることが可能になったため、再開に踏み切ったという。

牡蠣小屋復活に、松島を訪れた観光客は大喜び。熱した鉄板にスコップでどさりと乗せられた大量の殻つき牡蠣。じゅーじゅーと湯気をたてる牡蠣を豪快にほおばる。口の中にじゅわりと広がるうまみがたまらない!

料金は焼き牡蠣50分食べ放題コース(牡蠣飯、吸い物付き)で大人ひとり3,000円。オープン期間は2013年3月3日まで。平日も年末年始(12月25日~1月4日)までを除き営業される。

また、松島ではこの冬、市内の料理店で名物の「牡蠣丼」キャンペーンが展開中だ。牡蠣丼とは、松島の家庭で昔から親しまれているもので、名前の通り牡蠣がのっている。市内18の料理店やレストランなどが参加し、フライや卵とじ、中華風などそのお店ならではの牡蠣丼を味わってもらおうという試みだ。

2013年の3月まで行われているので、松島にお出掛けなら、牡蠣小屋の焼き牡蠣だけでなく、市内のお店の牡蠣丼まで、牡蠣づくしを堪能していただきたい。

こんな新鮮な牡蠣を使って松島名物の牡蠣丼は作られる

岩手県でも「牡蠣小屋」が復活! 復興のシンボルになっている

松島からリアス式の三陸海岸をさらに北にのぼって岩手県へ。ここでも復興のシンボルとして牡蠣小屋が復活を遂げており、観光客を喜ばせている。

まずは大船渡(おおふなと)の「漁師の牡蠣小屋」。この漁業の町も震災による津波によって甚大な被害を受け、牡蠣小屋こそ被害を免れたが、養殖棚は壊滅的なダメージを受けた。このため震災後は、牡蠣の食べ放題を中止し、小屋では焼きそばなどを提供してきた。

現在も大船渡産の牡蠣は震災前の10分の1以下にまで減少し、元の状態まで回復するにはこれから2、3年が必要とのことだが、それまで待ってはいられない。復興への強い思いを表すためにもと、地元の養殖業者は力を合わせて漁師の牡蠣小屋を復活させ、食べ放題を再開したのである。

食べ放題が復活したのは松島と同じ2012年12月1日。食べ放題は平日限定で、料金は40分で中学生以上3,000円。予約が必要、同牡蠣小屋事務局で予約を受け付けている。

さらに三陸海岸を北へと進んだ岩手県山田町。震災により大津波と猛火に包まれ、JR陸中山田(りくちゅうやまだ)駅まで焼失という壊滅的な被害を受けたこの町でも、漁師の心意気が地元の人たちを勇気づけている。2012年10月28日には「三陸山田復興牡蠣小屋」をオープンさせて、東北の牡蠣小屋再開の先陣を切った。

山田町にも笑顔が戻ってきた

山田の復興牡蠣小屋でも、殻付きの牡蠣をスコップで豪快に鉄板に乗せて蒸し焼きにする。「驚くほどの弾力と濃厚なうまみがつまっているのが山田湾の牡蠣」と山田町観光協会の沼崎さん。初夏の5月まで牡蠣が食べられるので、ぜひ一度訪ねてほしい。