宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月21日、2012年7月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられた「HTV-3(こうのとり3号機)」によって国際宇宙ステーション(ISS)に送られた「スプライト及び雷放電の高速測光撮像センサ(JEM-GLIMS:Global Lightning and sprIte MeasurementS on JEM-EF)」を用いて、雷放電発光を観測することに成功したと発表した。

同センサは、大阪大学、北海道大学、近畿大学、スタンフォード大学、極地研究所、大阪府立大学、東北大学、電気通信大学がJAXAと共同開発したもので、日本実験棟船外実験プラットフォーム「きぼう」に設置されているポート共有実験装置(MCE)に搭載されている。

高空間分解能をもつCMOSカメラ、高時間分解能をもつ測光器(フォトメタ)、VLF帯・VHF帯電波受信器によって、雷放電とスプライトを真上から継続的に観測することが可能であり、この真上観測によって、地上観測データからの導出が困難であった雷放電とスプライトの水平方向の空間分布と時間的な発達過程を、詳細に調べることを可能とするもので、8月9日のMCEへの搭載以降、各機器の初期機能確認が進められ、すべての観測装置の状態が正常であることを確認。2012年11月27日23時51分44.408秒(日本時間)にマレーシア上空で発生した雷放電発光を捉えることに成功した。

得られたデータから、今回観測された雷放電発光は、空間的に非一様な複雑な分布をしており、約20kmの空間的拡がりをもっていることが判明したほか、この雷放電では近紫外線の強い発光が波長150-280nmのチャネルで検出されたという。雷放電が発する高度20km以下からの近紫外線の光は、大気中のオゾンなどによってほとんど吸収されてしまい、ISSが飛翔する高度400kmには到達しないため、こうした近紫外線が検出されたことは、雷放電よりもより高い高度での発光、つまり、高高度放電発光現象の発生を示唆するものだと研究チームでは説明しており、今後、その妥当性を研究により検証していく予定としている。

なお、今回示された観測例は、データの品質検証を行う前のものであることから、研究チームとJAXAは、今後も連続的な観測を継続し、スプライトなどの高高度放電発光現象の検出を目指すほか、地上雷放電観測データとの比較により、JEM-GLIMSで観測した高高度放電発光現象を引き起こした雷放電の電気的特性を明らかにしていくとしている。また、世界各国の研究者との連携により、JEM-GLIMSと地上光学観測器による高高度放電発光現象の同時観測も実施する計画だという。

2012年11月27日23時51分44.408秒(日本時間)にJEM-GLIMSが観測した、マレーシア上空で発生した雷放電発光を真上からとらえたCMOSカメラ画像データ