ユニ・チャームは12月20日、複数の小児科のアレルギー専門医と協力して、外来通院中の喘息の子どもを対象に就寝時にマスクを装着する効果について研究を行った結果、就寝時にマスクを装着することで、喘息症状と喘息による治療などを5割低減させることを実証したと発表した。

同成果は、同社とてらだアレルギーこどもクリニックの寺田明彦氏、徳田ファミリークリニックの徳田玲子氏、国立病院機構三重病院アレルギー科の長尾みづほ氏、大阪歯科大学耳鼻咽喉科の久保伸夫氏、国立病院機構三重病院臨床研究部の藤澤隆夫氏らによるもの。詳細は「第62回日本アレルギー学会秋季学術大会」にて発表された。

近年、日本の子どもの喘息は年間100万人いると想定されており、約5~10%の割合で増加傾向にあると言われている。特に夜間に生じる喘息症状は、睡眠の妨げとなり、子どもの生活の質を低下させることが懸念されている。こうした喘息の原因としては、さまざまなものが挙げられるが、中でも空気中のダニやハウスダストなどのアレルゲンの増加が要因の1つとして考えられている。そのため、マスクを装着した形での就寝は、ハウスダストを気道へ吸引することをブロックできる有効な手段だと考えられるものの、実際にそれを検証した研究はこれまでほとんど行われてこなかったという。

そこで今回の研究では、治療中の小児喘息患者の協力を得る形で、各小児科医と共同で、子どもの就寝時におけるマスク装着により、喘息症状の低減ができるかどうかの実証実験が行われた。

対象となったのは6歳~15歳の男女31名で、実施期間は春が2011年4月~7月、秋が2011年9月~12月の各3カ月間。具体的な調査方法としては、各病院/医院などに通院している患者の中で、保護者の協力を得られた子どもに対し、マスク装着せず就寝した日とマスクを装着して就寝した日についてピークフローの測定と症状・治療内容をそれぞれ観察した喘息日記と通院時に喘息と鼻炎症状についてのアンケートを行う形で実施され、以下の6項目をすべて満たされた日を「喘息がコントロールされた日(asthma control day:ACD)」として比較検討を行った。

  1. 喘鳴がない
  2. 発作治療薬(β2刺激薬)の使用がない
  3. 早朝の咳がない
  4. 夜間の喘息症状(喘鳴、咳、それらによる夜間覚醒)がない
  5. 喘息による救急受診がない
  6. 喘息悪化による長期管理薬の追加・増量がない

この調査では、期間中マスク装着をせず就寝した日数960日中、喘息がコントロールされた日数(ACD)が788日、コントロール不良が172日で全体の18.0%であったのに対し、期間中マスク装着をして就寝した日数1,000日中、喘息がコントロールされた日数(ACD)は907日、コントロール不良は93日と全体の8.9%という結果が得られた。これにより、小児喘息において夜間、マスクを装着することで、コントロール不良発生率が18.0%から8.9%と約5割低減できることが確認されたこととなった。

マスク着用有無による喘息発症率の違い

また、起床時および就寝時のピークフロー値(PFER。十分息を吸い込んで思い切り息を吐き出したときの最大の息の速さ)は、マスク装着有りの方が無しよりも高いことも判明した。実際にアンケートの回答には、検証に協力した子どもの約7割が、「マスクをつけていて良かった」と答えたほか、「すきまができないこと」「息が楽であることがよかった」などの感想を得たという。

マスク着用有無による、ピークフロー値(PEF)の違い

今回の結果から研究グループでは、マスクを装着することで、鼻やのどから進入するアレルゲンをブロックできること、ならびに呼気を加温加湿することで鼻腔内の繊毛運動を活発にして入ったアレルゲン物質を排出する効果などが考えられるとしており、就寝時におけるマスク装着は、喘息症状を軽減する有効な手段であり、効果があることが実証されたと考えるとしている。