急速に普及しつつあるスマートフォンやタブレットに代表されるモバイルデバイスだが、交通各社では、これらユーザーをターゲットにした新サービスを次々と打ち出している。もしニューヨークやロンドンといった都市に行く機会があるならば、ぜひ活用してみてほしい。

新サービスの1つとして興味深いのは英ロンドンの事例だ。同市内を走る特徴的な外観が人気のロンドンタクシーでは、「CabWifi」と呼ばれる無料Wi-Fiサービスの提供を間もなく開始するという。Wall Street Journalによれば、ロンドンの公共交通サービスを統括するTransport for Londonによる承認が下り、この名物ロンドンタクシーの利用客が無料でWi-Fiサービスを利用できるようになるという。インターネット接続はタクシーごとに設置された3Gまたは4Gの携帯ネットワークを経由するもので、15秒の無料広告を見るだけで15分間のインターネット接続が可能になるようだ。タクシーの利用時間を考えれば、この長さがちょうどいいだろう。もともと英国ではプリペイドSIMがパスポートなしで誰でも安価に簡単に購入できるためスマートフォン経由でのインターネット接続には困らないが、旅行者が気軽に利用可能という意味では便利なサービスといえる。

ロンドン市内を走る名物のロンドンタクシー。間もなく、無料Wi-Fiサービスが提供されることになる

同じく"イエローキャブ"の愛称で知られる米ニューヨークのタクシーについても、これらモバイルデバイスユーザーをターゲットにした新サービスの準備を進めている。Wall Street Journalによれば、現在ニューヨークの米Taxi and Limousine Commission (TLC)はスマートフォンを活用してタクシーの呼び出しが可能な新サービスの法整備を進めているという。同件に関しては他の配車サービス業者がロビーで熾烈な反対活動を続けており、たびたび衝突を繰り返している。もし必要な行政側の後押しを得られれば、来年2013年にも同サービスの利用が可能になる。

時間帯によってはタクシーを捕まえるためにホテルで大行列を作ったり、主要通りに出て流しのタクシーを頑張って捕まえる必要があったりと、意外とタクシーを捕まえるのは難しいものだ。だがスマートフォンで必要なアプリさえあれば、ボタン1つで現在地点にタクシーを呼び出せる。シンプルだが非常に便利なこの種のサービスが登場しそうでなかなか登場しなかったのには訳がある。著名な事例はサンフランシスコで同サービスを展開しているUberのケースで、同社ならびにLyft、SideCarの3社が市の法律に違反したとして2万ドルの罰金を言い渡される事件が今年11月に発生している。これはUberが配車提携していない同業他社のドライバーが「公正なルールに則っていない」との理由でUberを訴えたことに起因するもので、業界内で一種の足の引っ張り合いに近い状態となっている。その意味でニューヨークでのサービスが成功するようであれば、こうした問題を解決する糸口の1つとなる可能性がある。

モバイルユーザーにもう1つありがたいニュースが、飛行機でのデバイス利用に関するルール緩和だ。 eWeekによれば、米連邦通信委員会(FCC)が米連邦航空局(FAA)に対してモバイルデバイス利用のルールを緩和するよう求めているという。連邦航空法の規定では、飛行機に対するダメージを未然に防ぐため、800MHz等の電波を出す携帯電話の機内での利用を禁止している。すでに一部ではWi-Fi利用に関してのみ利用を許可するケースも出ているが、これをさらに緩和してタブレットや電子ブックリーダーなど、Wi-Fi搭載デバイスを中心にフライト中でも問題なく使えるよう対処を求めるというのが今回のFCCからFAAへの請願書の趣旨だ。利用場面が増えるのはユーザーにとっては好ましいことだ。