日立造船および住友化学は12月12日、津波により塩害や微細がれき混入の被害を受けた農地の修復に向けた技術を確立したことを発表した。

東日本大震災による津波で被災した農地は、海水による塩害の影響だけでなく、津波によって運ばれた堆積物(土砂)や微細がれきの効率的な除去が困難なことから、修復が遅れているのが実情だ。

2社は2011年11月から宮城県亘理郡亘理町の水田において実証実験を行ってきており、今回の成果はその実験結果を反映させたものとなっている。具体的には、洗浄分級技術「Hitz LaRWS(ラーズ)工法」により、水田から回収した土砂中の塩分と微細がれきを除去する実験と、地表の高さや作土層の違いをGPS(Global Positioning System)を利用して高精度に計測しながら土砂の回収や戻し入れを行う実験を実施。

塩分と微細がれきを除去して戻した土砂を施肥などにより作付けに適する状態に修復させ、2012年5月から稲の生育試験を行ったところ、10月に収穫した米は、品質・食味ともに問題のないことが確認されたという。

この実証実験では、日立造船が土砂の回収や除塩、微細がれきの除去を行い、住友化学が土壌診断、施肥設計および生育試験を担当。日立造船は、高精度に地表や潮位等を測定することができるGPS事業を展開しているほか、洗浄分級技術を用いた土壌浄化に優れたノウハウを有しており、住友化学は、農薬や肥料の事業を通じて培ってきた土壌診断や施肥方法に豊富な知見があることから、今回の実証実験は、こうした両社の強みを生かしたものとなった。

今後両社は協力体制を維持したまま、亘理町も含めた被災地において、今回確立した農地修復技術を生かした活動を展開し、被災地の農業の復興の手助けをしていきたいとしている。