三菱重工業は12月6日、人が近づけない災害や過酷事故の現場を自由に移動し、2本のロボットアームで点検だけでなく保守・補修などの作業ができる遠隔作業ロボット「MHI-MEISTeR」を開発したと発表した。MEISTeRはMaintenance Equipment Integrated System of Telecontrol Robotの略で、「マイスター」と読む。

同機は、1999年に茨城県東海村で起きた核燃料加工施設の臨界事故をきっかけに、当時の日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)と同社が共同開発した耐環境型ロボット、通称「Rabot」をベースとして開発された。

具体的には、その姉妹機として当時製作された社内用ロボット「MARS-D」を、現在までに原子力施設のメンテナンスの現場で培った技術を活用して、東京電力の福島第一原子力発電所で使えるように改良した形だ。ロボット内部の汚染防止対策など耐放射線性能や遠隔操縦性が高められている。

MEISTeRはロボットアームを持つことが特徴だが、そのロボットアームは人の腕と同じような片腕で7自由度(関節)を持ち、1本あたりの可搬質量15kgだ。先端部にさまざまな専用作業ツールを簡単に着脱できる仕組みで、片方でモノを把持しながらもう一方で切断する作業や、左右に異なるツールを装着して1台で2種類の作業を同時に行うことができる。

今回、コンクリートの汚染調査用にドリルやハンド(挟み爪)などの専用ツールも併せて開発され、それらをMEISTeRに装備することで、コンクリートの壁や床から70mm程度の深さまでのサンプルを遠隔操作で採取することが可能となった。人が近づけない高線量域における汚染状況調査での活躍が期待できるのである。

またMEISTeRの移動機構は、不整地や狭い場所の走行が可能なクローラ(対地自動追従式独立4クローラ式)を採用しており、最大速度は時速2km/h、傾斜40度、段差220mmまでの階段昇降、そして不整地走行性能を有する。

その移動能力を有した台車上に高機能なロボットアームを2本搭載したのがMEISTeRである。これにより、従来の探査型ロボットでは対応できなかった、前述のコンクリート穿孔を初め、手すりや配管の切断、障害物の除去、除染や簡単な補修などに迅速に対応できる多機能性を大きな強みとした。

同社は今後、福島原子力発電所などでの多様なニーズに対応するため、各種先端ツールの開発をはじめ、さらに高機能な遠隔作業ロボットの技術開発を進めていくとしている。

なお、スペックは以下の通り。

  • 寸法(外形):全長1250mm×全幅700mm×全高1300mm 質量:440kg
  • 移動方式:対地自動追従式独立4クローラ式
  • 移動速度:時速2km/h
  • 走行性能:傾斜40度、段差220mmまでの階段昇降、不整地走行、狭い場所の走行
  • 通信:無線・有線の選択(無線時はバッテリーで2時間稼働)
  • ロボットアーム:7軸アームを2本搭載。1本あたりの可搬質量15kg

三菱重工業が開発した遠隔作業ロボット「MHI-MEISTeR」