東海エリアの多くの中華料理店でメニューにのぼる「台湾ラーメン」。ミンチのトッピングがほどこされた激辛ラーメンで、いわゆる名古屋メシのひとつに数えられている。しかしなぜ名古屋メシなのに「台湾」なのか? そもそも台湾に行っても、こんなラーメンなんか存在しないのだ。数々のナゾを秘めた台湾ラーメンの正体を探る!
ルーツは台湾の麺料理「担通麺」?
「台湾ラーメンは、当店の初代オーナーが考えたまかない料理だったんです」。こう説明してくれるのは、味仙今池本店の川野国広さん。同店は、台湾ラーメンの元祖中の元祖の店だ。
川野さんによると初代オーナーは台湾人で、故郷台湾で食べられている麺料理「担通麺(たんつうめん)」をまかないで食べていた。鶏ガラスープに肉みそやシャンツァイがトッピングされたこの麺料理こそが、台湾ラーメンのルーツだそう。
しかしその台湾の担通麺、実はまったく辛くないというのだ。そこに「辛いもの好き」なオーナーが独自のアレンジを加えた。これが内輪で人気を呼ぶ。
そして、「友だちから言われたんでしょうね。メニューにして店で出せって」。かくして45年ほど前に誕生した台湾ラーメンは、20年ほど前の激辛ブームで一気に脚光を浴びた。加えて名古屋メシブームの到来もあり、全国的にも名前を知られることになる。
台湾ラーメンの味のポイントは、「後を引くうまみです」と川野さん。「辛さはいくらでも調整できます。足りなければ足せばいい。でも、うまみは後から足せないので、うまみがないとまた食べようとは思いませんよね」。
そう言って、さあどうぞ食べてみてくださいと出された台湾ラーメンは、普通のラーメンより丼が小ぶり。でも麺のボリュームは1人前あるそうだ。
2時間じっくり煮込まれたミンチ肉がガツンとくる!
スープ鶏ガラベースで、辛さの秘密は唐辛子とニンニクで2時間じっくり煮込まれたミンチ肉のトッピングにある。このミンチ肉の辛みとコクがスープに溶け込み、台湾ラーメン独特の味わいが完成するのだ。他のトッピングはモヤシとニラだけとシンプルだ。
スープをひと飲みすると、まず感じるのがミンチならではのコク。そこにニンニクの風味と唐辛子の辛みがじんわりと攻めてくる。麺をひと口すするごとに、そのミンチが一緒に絡んでやってくる。「深夜営業なので、飲んだ帰りのご来店も多いですよ」と川野さんが言う通り、飲みの最後のシメにももってこいの一品といえる。
ちなみに味仙は現在、愛知県に8店舗展開している。全て親族ののれん分けだそうで、「不思議なもので、材料も作り方も同じですが、味はそれぞれ個性があります」というから、食べ比べしても楽しそうだ。
「いずれは東京に進出したいですね。そうすれば、台湾ラーメンが全国区になりますから」と夢を語る川野さん。東海エリア外からのメディアの取材も増えているそうで、この前は青森テレビの取材もあったとか。全国区への階段を一歩ずつ登っているようだ。
ちなみに味仙では、台湾ラーメンの他に「青菜炒め」「コブクロ炒め」などオリジナルの人気メニューも少なくない。ぜひ、このあたりのメニューも台湾ラーメンと一緒にオーダーしてみよう。今が旬の名古屋メシを支える名脇役たちだから。
●information
味仙今池本店
愛知県名古屋市千種区今池1-12-10