金沢大学は、肥満状態の肝臓で生じる変化を解析する中で、細胞内の品質不良タンパクを分解する装置であるプロテアソームの機能異常が、小胞体ストレスとインスリン抵抗性の原因となることを、遺伝子改変マウスと細胞実験から証明したと発表した。

同成果は同大医薬保健研究域医学系恒常性制御学分野 の篁俊成 准教授、金子周一 教授らによるもので、詳細は、米国糖尿病学会誌「Diabetes」(オンライン版)に掲載された。

インスリンは糖の吸収やエネルギーの蓄積に重要な役割を担うホルモンであり、栄養過多や肥満の状態はインスリンの働きを妨げ、いわゆる「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態を作りだすことが知られており、これがメタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化、がんなどの生活習慣病を促進するため、その発症メカニズムの解明に向けた研究が進められている。

体の細胞の中ではでさまざまなタンパク質が働いている一方、役割を終えて不要になったタンパク質や、有害なタンパク質もある。そうした各タンパク質の役割を見分けて分解・除去するのが細胞内の「プロテアソーム」であり、同機能の低下により品質不良のタンパク質は品質管理工場である小胞体に蓄積され、小胞体ストレスが生じることとなる。

近年、肥満は小胞体ストレスを引き起こすことで肝臓および脂肪組織でインスリンの効きを悪くする(インスリン抵抗性)ことが報告されたが、肥満がいかに小胞体ストレスを誘導するかの分子メカニズムは不明のままであった。

今回の研究では、肥満状態の肝臓で生じる変化を研究する中で、プロテアソームに着目し、以下の4つのことを遺伝子改変マウスと培養肝細胞の実験から証明した。

  1. 肥満状態ではプロテアソーム機能が低下する
  2. このために品質不良タンパクが分解されずに小胞体に蓄積する
  3. これが小胞体ストレスを生み、インスリン抵抗性をもたらす
  4. 小胞体ストレスを消去する治療がプロテアソーム機能低下によるインスリン抵抗性を改善する

これらの結果について研究グループでは、プロテアソームでの品質不良タンパクの分解力低下が、従来不明であった肥満と小胞体ストレスの間をつなぐ現象であることを示すものであると説明するほか、今後、プロテアソーム機能を高める治療や薬剤の開発により、肥満症や2型糖尿病に対する治療につながるようになるとの期待を示している。

プロテアソームの機能異常が、小胞体ストレスとインスリン抵抗性の原因となることのイメージ