浜松ホトニクス(浜ホト)は11月29日、重水素ランプの真空紫外線を利用した静電気除去ユニット「VUVイオナイザ」の新製品「L12542」を発表した。

浜松ホトニクスの静電気除去ユニット「VUVイオナイザ」の新製品「L12542」

電子デバイスで多層積層するプロセス工程では、真空チャンバ内での半導体ウェハや液晶パネル用のガラス基板などの搬送が頻繁に行われる。この搬送装置には、静電気の吸引力を利用した静電チャックが多用されている。しかし、この搬送において、静電チャックからウェハをデチャック(分離)しリフトアップする際に、ウェハから除去しきれない帯電の影響でウェハを損傷することが問題となっており、デバイスメーカーからは、歩留りとスループットを向上するために、この残留帯電を完全に除去したいという要望があった。

同製品は、このニーズに対応したもので、不活性ガス雰囲気での除電が可能となっている。MgF2窓付高輝度重水素ランプを内蔵した静電気除去ユニットで、真空紫外線の光電離(フォトイオナイゼーション)により、真空チャンバ内などの減圧下での微量な残留分子を直接イオン化し、帯電を除去することで、プロセス工程の歩留り向上と高速除電によるハイスループット化に寄与する。また今回、これまで分析業界で使用されている重水素ランプを採用した。同重水素ランプは、点光源で高輝度に特化した電極構造形状のため、大面積照射に不向きな光源だったが、同製品ではこの課題を解消したものだという。

特長は主に3つ。1つ目は、光源だった重水素ランプの開口部を広角にして、さらに長寿命も実現したこと。電極のアパーチャー(開口)構造と配置位置を広角照射に最適化したことにより、光の放射角を約30度に広げ、大きな面積に照射可能になった。チャンバへの取り付け位置を最適化すれば、1ユニットで300mmウェハの除電が可能になる。また、独自の冷却構造により窓面への不純物スパッタを低減することにより、広角照射でありながら保証寿命を2000時間に向上させている。

2つ目は、減圧下での高い除電能力。高輝度な重水素ランプのため、真空チャンバの減圧下でも照射範囲全てが高イオン濃度生成範囲となり、除電効率が上がるとともに除電時間も短くなるという。

3つ目は、逆帯電がないため調整が不要なこと。光電離は、真空紫外線エネルギーが原子または分子にぶつかり、電子(マイナス電荷)が1つはじき出て、プラスの電荷を持った原子または分子のイオンに分かれる原理となっている。はじき出た電子は、他の原子や分子に入り込みマイナスの電荷を持った原子または分子のイオンができる。プラス・マイナス同数のイオンが同時に生成されるため、逆帯電がなくプラス・マイナスのイオンバランスの調整が不要となる。

なお、価格は43万500円。12月10日より国内外の半導体製造装置メーカーなどにサンプル出荷を開始する。販売目標金額は1年目は1億円、3年後には3億円を目指す。

重水素ランプの照射角(配光)。従来タイプ(赤線)と新開発の広角照射タイプ(青線)。