全国大学院生協議会はこのほど、「大学院生の経済実態に関するアンケート調査」の結果を発表した。同調査は、7月12日~9月15日の期間調査票を配布した上で回収、またはインターネット上で行われ、38国公私立大学の大学院生755人から有効回答を得た。

それによると、大学院生の約6割がアルバイトに従事していることが判明。その目的として最も多かった回答は「生活費あるいは学費(研究費を含む)を賄うため」で93.1%に上った。また、研究時間が十分に確保できない要因として、全体の24.9%がアルバイトを挙げたことが分かった。

大学院での研究・生活上の懸念(不安)を尋ねたところ、トップは「研究の見通し」で60.7%。以下、「就職状況」が56.6%。「生活費・研究費の工面」が50.7%、「授業料の工面」が32.4%、「奨学金の返済」25.0%と続き、経済問題が上位に入る結果となった。大学院生からは「奨学金の返済や授業料などのことを考えると、不安でしかたがない。変なあせりもあり、おちついて研究できない」といった声が寄せられている。

同調査では、61.4%が「収入不足が研究に影響を与えている」と回答。具体的な影響としては、「研究の資料・書籍を購入できない」が最多で76.2%を占めた。次いで、「調査に行けない」が42.3%、「学会・研究会に行けない」が35.8%、「授業料が払えない」が27.7%、「パソコン・インターネット環境を整備できない」が23.6%となった。さらに、博士課程に進学する際の懸念材料としても、半数以上が経済問題を挙げたという。

収入不足について研究への影響(出典:全国大学生協議会Webサイト)

研究時間に関する質問に対しては、56.9%が「研究時間が十分に確保できていない」と回答。その理由としては、「種々の雑務」が44.4%で最も多く、以下、「アルバイト」が43.9%、「授業や研究会の多さ」が33.9%、「心身の不調」が22.9%、「就職活動」が19.5%、「家事・育児・介護」が13.5%と続いた。また、博士課程では「種々の業務」の割合が高くなったほか、「心身の不調」との回答はOD(オーバードクター)では約4割に上った。

奨学金の返還に対する不安については、46.9%が「かなりある」、33.2%が「多少ある」と答え、合わせて約8割が奨学金の返還に不安を感じていることが明らかになった。

若手研究者を支援する「日本学術振興会特別研究員(以下、学振)」制度に関しては、21.0%が「採用されないと思ったため応募しなかった」と回答。実際に応募した者は15.6%にとどまっている。

留学生において、「収入の不足が研究に影響を与えている」と答えた割合は、国費留学生で73.7%、私費留学生で85.7%。また、学振についても、国内院生と留学生とでは応募総数に約4倍の格差があり、31.3%が制度そのものを知らないことが分かった。