日本総合研究所は14日、同社調査部が取りまとめたレポート『中国再加速の兆し~盛り上がる固定投資~』(「藤井英彦の視点」 No.2012-097)を公表した。

これによると、中国経済に再加速の兆しがある。全体の動きを示唆する物流や電力動向をみると、まず貨物輸送量は今年入り後、昨年半ば以降の頭打ちを脱し力強い増勢。一方、発電量は春節要因で今年初増加したものの、1~3月を除くと、昨春来、横這い傾向が持続。しかし7~9月に増勢に転じ、10月大幅増となっている。

原動力は、固定資産投資の盛り上がりという。固定資産投資は近年、次第に増勢に翳りが出ていた。とりわけ昨年は年央から年末にかけて弱含みで、今年も5~6月頭打ちだった。しかし7月以降、再びハイペースの増勢回復。業種別にみると、まず製造業が機械工業を中心に持ち直し、次いで不動産業が今年入り後、着実な増勢を維持しているという。さらに、今年半ばから高速道路建設が再び勢いを増している。

固定資産投資(季調済)

レポートによると、成長確保に向けた政府の積極的姿勢を示唆している。加えて従来にみられない動きもあるといい、まず下水道をはじめ環境関連投資が年初来、着実に増加。一方、発電所や送電網を含め、需給逼迫懸念が拡大してきたエネルギー分野で投資が活発化している。

昨年半ばから年末にかけての投資調整は、不動産価格の抑制を目指す政府のスタンスが投影している。エリア別には沿海部が主要ターゲットで、政策効果が次第に顕在化。このところの不動産価格をみると、リゾート・バブルが崩壊した海南島をはじめ、上海や天津で価格下落。

一方、内陸開発が本格化し、固定資産投資が盛り上がる地方圏では総じて不動産価格が上昇している。急速に進む都市化に商業ビルや住宅、工場などインフラ整備が追い付かず、需給がタイト化。今年10月の昨年末対比上昇率をみると、最大の上昇はインフラ不足が深刻な青海省、次いで省都南昌を中心に成長離陸が始動した江西省、さらに江西省と連動して成長加速する湖南省。今後を展望しても、「内陸投資に牽引され同国経済は力強い成長軌道復帰の公算大」(同レポート)としている。