日本SGIは11月12日、電力中央研究所(電中研)の新しい科学技術計算用大型計算機システムとして、ブレード型高性能HPCサーバ「SGI ICE X」を納入したことを発表した。

同システムの理論演算性能値は670.9TFlopsで、クラスタシステムとして国内トップクラスの性能になるほか、同社が国内に納入した「SGI ICEシリーズ」においても、2012年11月12日時点で最高性能の大型クラスタシステムになるという。

電中研は科学的に真理を探究し電気事業と社会に貢献できる技術を創出するため、1951年に創設された電気事業共同の研究機関で、近年は、電力の安定供給に関わるリスクの低減や設備運用・保全技術の高度化、次世代電力需給基盤の構築を研究の柱としている。

同システムは、そうした研究の促進に向けて増強されたもので、2012年7月よりすでに本番稼動を開始。これにより、電気設備の保全や災害対策に重要な地球環境や気象変動の予測、火力発電における燃焼効率の向上など発電技術の高度化、電力設備の維持・高度化に寄与する構造材料の設計・評価研究などの課題に対する研究効率の向上が期待されるという。

システムの構成は、「Intel Xeon E5-2670プロセッサ」(8コア/2.6GHz)を合計4,032個(32,256コア)、総メモリ容量67.5TB搭載の大規模クラスタシステム。InfiniBand 4× FDRにより2,016ノード(ノードあたり2個のプロセッサを搭載)のブレードサーバが相互接続されているほか、データ保存用のストレージも総ディスク容量2.88PBを搭載。さらに、システムの高性能化による発熱の上昇を最小限に抑えるため水冷式の冷却システムを採用し、空調設備の大幅な増強を図ることなく設置環境を含めたシステム全体の省電力化が実現されている。

科学技術計算システムの重要な要素であるファイルシステムには、SGIが正式サポートするオープンソースの「Lustre File System」を採用。このオープンソースの並列ファイルシステムにより、大量の計算データを円滑に読み書きするための高速で安定したファイルシステムが構築されたという。

なお同社では電中研に同システムが採用された要因について、理論性能のみならず、最新の気象予測数値モデル「WRF」および第一原理分子動力学解析コード「VASP」の実行演算性能の観点からも高く評価された結果としている。