AlteraのSenior Vice President and General Manager,Automotive,Military,Industrial and Computing Divisionを務めるJeff Waters氏

FPGAベンダのAlteraは11月6日、都内で会見を開き、日本の自動車市場に本格的に参入することを宣言した。

2002年から2020年までの間に小型乗用車の出荷台数は2倍に伸びることが見込まれているが、自動車のエレクトロニクス化は事故防止や燃費向上、インフォテイメント機器の搭載などの要求により、それを上回る3倍の伸びが期待されている。「こうした数量の増加により、単価そのものは下がってきているが、自動車1台あたりのECUコストは600ドルを超すまでになってきた。こうした市場の拡大は、インフォテイメント、次世代運転支援システム(ADAS)、そして電気自動車(EV)/ハイブリッド自動車(HEV)の伸びが背景にある」とAlteraのSenior Vice President and General Manager,Automotive,Military,Industrial and Computing Divisionを務めるJeff Waters氏は語る。

特にインフォテイメント分野ではスマートフォンやタブレットPCの市場拡大に伴い、2018年には1億2000万台市場に成長することが見込まれているが、こうした世代交代が早い機器をSoCで各世代ごとに対応していこうと思うと、インタフェースの規格変更などに対応できなくなり、FPGAにとってチャンスだという。また、ADASについても、衝突防止用のフロントカメラのほか、リアビューの搭載も欧米では法制化されるなどの動きがでてきているが、FPGAを用いることでマイクロプロセッサやビデオプロセッサエンジンを1チップに統合することができ、自律走行処理などにも活用することができるようになるとする。

インフォテイメント、ADAS、EV/HEV分野などでFPGAが活用されるようになってきているというのが同社の主張するところ

こうした柔軟性を低消費電力で提供しようというのが同社の提唱する「Silicon Convergence」であるが、これは自動車分野にも当てはまり、例えば従来のカメラシステムではASIC、DSP、FPGAなどを組み合わせて構成されているが、これらの機能をFPGA内に統合することで、信頼性の向上とBOMコストの削減が可能になるとする。また、「例えば自動車メーカーであっても、機器メーカーであって、1つのハードウェアを作って、そこから世界の各地域に向けた最適化や車種ごとのカスタマイズを行っていく必要がある。そうした場合、それぞれの地域に応じた通信規格などに見合ったチップを新たに選定して、といったことを行っていては膨大な労力が必要となるがFPGAを用いれば、回路設計を変更するだけで対応することが可能になる」と設計効率の向上が図れるメリットを強調する。

FPGAを活用することで複数のチップを1チップに統合できるようになるほか、歩留りや性能向上も可能となり、かつさまざまな車種などへの展開もしやすくなるとする

また、同社は自動車分野の各種規格への対応も進めており、Jasparやルネサス エレクトロニクスのR-Carコンソーシアムにも参加済みとするほか、チップのみならず、IPや設計ツールなどについても基準適合を進めているとしており、ISO26262の認証に向けた対応も進めているとのことで、こうした規格認証によりカスタマは開発期間の短縮を図ることが可能になるとする。さらに、デバイスの提供期間についても10年を超す供給を産業機器に向けて保証してきた経緯もあり、自動車分野でもそれを保証できるとしている。

同社では自動車分野は2017年まで2桁成長を継続するとみており、その生産台数の約29%を占める日本は非常に重要な位置を占めることになる市場との認識を示しており、「ARMコアを搭載したSoC FPGAもアーリーアダプタ向けに2012年12月に提供を開始でき、2013年初頭にはエンジニアサンプルの供給開始できる見込み。単なるFPGAだけでなく、そうしたデバイスも活用することで、インフォテイメント分野やADAS分野の差別化を図ることができるようになる」と意気込みを見せており、FPGAが自動車の成長因子となるよう、代理店含めて、専門チームを中心に自動車分野に向けた取り組みを強化していくとした。

運転支援システムで使用されることを想定したデモシステム。カメラの画像とレーダーの信号という、高速で複雑な処理を1チップで実現が可能となっている。同システムは標準のCyclone IV開発キットとレーダー、カメラを組み合わせたもので、回路の設計は1カ月半程度で済んだという。実際のシステム要件はカスタマごとで異なるため、ソリューション開発については、同社ならびにパートナーとの連携により受託開発のような形が想定されるとしている