IDC Japanは11月5日、国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表した。これによると2012年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は前年比46.0%増の941億円規模となる見込み。同市場は拡大を続け、2016年の同市場規模は、2011年比4.7倍の3,027億円になると同社では予測している。

2012年の国内パブリッククラウドサービス市場は、ベンダーのサービス拡充とユーザーの増加から順調に拡大。また、パブリッククラウドサービスを適用するシステム領域も多様化が見られ、同市場の成長を促進しているという。

国内パブリッククラウドサービス市場 セグメント別出荷額予測(2011年から2016年) 資料:IDC Japan

パブリッククラウドサービスが適するシステム領域の多様化に伴い、ベンダーのビジネスモデルや成長戦略にも変化がみられ、なかでも、高い成長が見込まれるクラウドプラットフォーム(PaaS:Platform as a Service)は、既存ITの効率化から、IT(クラウド)を使った企業/事業活動の変革や新市場の創出を支援するビジネスへと著しく発展。一方、ユーザーが求めるサービス価値の変化と、ベンダーのサービス開発の加速は、PaaSから「マネージドインフラストラクチャ(運用管理が付帯したIaaS:Infrastructure as a Service)と、自動化されたミドルウェア環境」へと導いているという。

また、PaaSとして期待の高いビッグデータプラットフォームは、業界標準化を反映したコミュニティクラウドサービスや、ベンダーの分析ノウハウと処理技術を融合した業務支援サービス(BPaaS:Business Process as a Service)へと発展。なお、同社ではコミュニティクラウドサービスやBPaaSは、パブリッククラウドサービス市場から除外している。

PaaSの発展は、パブリッククラウドサービス市場PaaSに該当しないサービスの拡大を促進している。その結果、国内パブリッククラウドサービス市場予測は、前回調査の2012年4月から下方修正となった(前回調査では、2016年の同市場規模を3,412億円と予測)。

本調査における市場予測の下方修正は、「クラウド」が低迷したのではなく、発展する過程で生じた変化であり、クラウドの成長は加速傾向にあるとIDC Japanはみている。

IDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの松本聡氏は、「クラウドによる『ITの効率化』は既存IT市場を破壊する。一方、『ITを使った変革』へと価値命題を変換することが、ベンダーおよびユーザーの事業機会の創出に重要である」と述べている。