Silicon Laboratories(Silicon Labs)は11月5日、自社の製品ラインアップにInternet of Things(IoT)向け低消費電療ワイヤレス組み込みデバイス「Ember ZigBeeソリューション」を追加し、2.4GHzワイヤレス・メッシュ・ネットワーキングソリューション向けSoCおよびネットワーク・コプロセッサ(NCP)「EM35xファミリ」、ならびにソフトウェア「EmberZNet PRO」の販売を開始したことを発表した。

シリコン・ラボラトリーズの代表取締役社長/カントリーマネージャーの大久保喜司氏

これらの製品は同社が2012年5月に買収したEmberの技術をベースとしたもので、これにより「従来強みを発揮していたサブGHzに加えて2.4GHz帯ソリューションが追加されることとなり、我々が近距離向け無線において、主導的な立場をとるための準備が整った」(日本法人であるシリコン・ラボラトリーズの代表取締役社長/カントリーマネージャーの大久保喜司氏)とする。

Silicon LabsのEmber ZigBee製品担当ゼネラルマネージャーを務めるロバート・ルフォー氏

同社Ember ZigBee製品担当ゼネラルマネージャーのロバート・ルフォー氏は、「我々はZigBeeこそが消費電力やネットワーク構成、高い信頼性と頑強性、そして柔軟性などの観点からIoTの用途に最適だと考えている」とメッシュネットワークで接続されるZigBeeがサブGHzやWi-Fi、Bluetoothなどのネットワークを補完し、IoTを支える基盤になるとする。

「典型的な家庭内でのネットワークを考えると、テレビやスマートフォンなどの接続先にはWi-Fiが向いている。しかし、家にある照明のスイッチや対人センサなどでは、帯域よりも消費電力や接続の確保のしやすさといった面でZigBeeが向いている」とし、すでに米国ではZigBeeを採用したネットワーク網が店舗や家屋内で進んでおり、欧州でもそうした対応が進められているとする。具体的な例としても、「サービスプロバイダはこうしたネットワークをセキュリティ用途などに活用し、カスタマへの付加価値として提供するようになってきた。最近、Do it Youraself(DIY)セキュリティというような、ホームセンターなどでセキュリティ機器を買ってきて、家庭内にそうした機器を取り付け、ホームセキュリティネットワークを構築するという動きも出てきた。一度、家庭内でインフラが構築されてしまえば、さまざまなデバイスを載せることも可能となり、スマート家電やエネルギーコントローラ、LED照明などもそこに載ろうという動きが出てきている」といった使い方を示し、将来的にはヘルスケア機器などもそこに加わることで、病院との連携のしやすさ、リモートでの医療機器の操作なども可能になるとの見方を示す。

Wi-FiやZigBeeなど複数の無線ネットワークが相互に結びつくことで、さまざまな機器のデータを統合、管理することが可能になる

EX35xは、2.4GHz IEEE 802.15.4トランシーバ、+8dBmのパワーアンプ、ARM Cortex-M3コア、最大192KBのフラッシュメモリと12KBのRAMを内蔵しており、少なくとも他のZigBeeソリューションに比べてバッテリ稼働時間を25%延長することが可能になるとする。また、そうしたチップを活用するためのソフトウェアも重要で、「もともとEmberはソフトウェア企業であり、ネットワーク向け技術の開発を行っていた。そのため、他のチップベンダとは違って、実際に市場で使われてきたソフトウェアスタック(EmberZNet PRO)の提供が行われており、我々はこれを最新のものに保守していくことをコミットしている」と、半導体チップのみならずネットワーク接続するのに必要なソフトウェアについても継続して提供していくことで、幅広い分野への対応を維持していくとする。

同ソフトの開発キットも提供されており、それを活用することで、パケットの追跡が可能になるほか、ネットワーク全体の可視化が可能になる。これにより、ZigBee通信機器の開発者は、組込機器、ネットワーク、RF部分を区別することなく良好な通信が実現できているかを確認できるようになるとするほか、「RFを用いた開発では、ノイズの影響なのか、パケットが届いていないのか、パケットが別ノードに届いており、そこから先に進めていないのか、などなど、さまざまな問題が生じる。こうした問題は実際に、ネットワークのすべてが見えなければ、解決することは難しい」とし、こうしたツールを活用してデバッグを行うことで、余分な苦労を省き、開発時間の短縮を図ることが可能になるとする。

なお同氏は「我々はIoTの推進により、生活の質が向上し、より豊かな生活を送ることが可能になると信じている。そうした社会を実現するために、ZigBeeに拘らず、さまざまな無線通信技術を組み合わせて提供を今後も継続していく」と今後の抱負を述べており、将来にわたってさまざまな無線技術を適材適所で提供していくことでIoTの普及促進を図っていくとし、2013年にはサブGHz帯域対応のZigBeeチップなどの提供も行っていく計画とした。

半導体チップとソフトウェアの双方を提供することで、複雑なネットワーク機器の開発を容易化できるようになる、というのが同社の主張するところ

EM35xファミリならびに開発キット/デバッグツールなどの一連のソリューションはすでに提供が開始されており、1万個購入時の単価はEM351で4.76ドル、EM357で5.07ドルとしている。