凸版印刷は11月5日、同社が発売中の放射性セシウム吸着ゼオライト機能紙「FS-ZEO(エフエス・ゼオ)」のラインアップの拡充を図り、薄型の特殊シートを貼り合わせて敷設したゼオライト機能紙の回収性を高めた軽量タイプ「FS-ZEO-NW」(画像1)と、高強度の特殊シートを貼り合わせて耐加重などの強度を高めた高強度タイプ「FS-ZEO-TE」(画像1)の2種類を開発、2012年10月下旬より本格的な販売を開始したことを発表した。

手前が軽量タイプのFS-ZEO-NWで、奥が高強度タイプのFS-ZEO-TE (c) 2012 TOPPAN PRINTING

放射性セシウムを吸着する吸着剤としてゼオライトが知られており、農地や森林、水田などでの除染作業ではゼオライト粉を散布する方法などが使われている。

これらの散布方法に対してゼオライト機能紙のFS-ZEOは、ロール原反での提供が可能なことから、対象の土地などに対して均一に、かつ簡単に敷き詰めることが可能となり、施工の手間が削減できる点が大きな魅力だ。

また、ロール原反の状態で備蓄しておくことにより、緊急事態の際などにスピーディに加工すると共に、施工することが可能となる。

そうしたメリットからFS-ZEOは、東北地方の最終処分場において本格採用され、放射性物質を含んだ煤塵(ばいじん)からの万が一の放射性物質の流出が起きた際の土壌汚染を防止させるための下敷きとして活用されている。また、福島県川内村で実施されている土砂や水などに含まれた放射性セシウム拡散防止の実証実験でも、ゼオライト機能紙が活用されているところだ。

これら採用にあたっては、紙(ロール)の形状であることから施工が容易であること、ゼオライトが重量比で80%以上含まれ吸着性能に優れること、機能紙がゼオライト粉とパルプで構成されていることから環境にも優しいことなどが評価されたという。

FS-ZEOの性能面については、採用事例の中では、汚泥の除染で99%以上の放射性物質を除去し処理水が排水可能な水準まで低減できた場合があったとする。こうした報告により、FS-ZEOがゼオライト単体と同様に放射性物質の吸着性能があることが確認された次第だ。

一方で、上記のようなロール原反の特長を活かして、高圧洗浄による除染作業で飛散した汚染水の下敷きとして使いたいという要望があったが、敷いたゼオライト機能紙を巻き取りにより回収しやすくして欲しいというニーズがあった。

また、最終処分場の下敷きとして本格採用されたが、重機などが軟弱地盤上のゼオライト機能紙の上に通行した際にも破断などがないようにさらに強度を上げたいというニーズもあったのである。

今回の新製品はこれらのニーズに対応するべく、従来のゼオライト機能紙に特殊シートを貼り合わせた軽量タイプと高強度タイプの2種類としてラインアップされたというわけだ。

製品の概要は以下の通りとなる。1つ目は、軽量タイプのFS-ZEO-NWだ。従来のゼオライト機能紙に薄型の特殊シートを貼り合わせ、耐水性の向上や巻き取る際の回収性を高めたのが特長だ。貼り合わせは、片面、両面のどちらにも対応している。

主な仕様は、両面貼り合わせタイプの場合、サイズが約1000mm巾のロール形状、厚さが約0.75mm。特長として、FS-ZEO単体に比べて巻き取る際のゼオライトの脱落を極小化、また耐久性の向上により長期間放置後の回収も容易となっている。

2つ目は、高強度タイプのFS-ZEO-TE。従来のゼオライト機能紙に高強度の特殊シートを貼り合わせ、耐加重などの強度を高め、軟弱地盤上に敷いた上に重機が乗ったりしてもゼオライト機能紙が破断したりすることを防止した。貼り合わせは、片面、両面のどちらにも対応している。

主な仕様は、両面貼り合わせタイプの場合、サイズが約1000mm巾のロール形状、厚さが約1.4mm。特長は、FS-ZEO単体に比べて引っ張り強度(約6倍向上)と引き裂き強度が向上し耐久性がアップ点だ。

価格は、軽量タイプも高強度タイプも共に片面貼り合わせ加工で800円/平方メートル、両面貼り合わせ加工で1000円/平方メートルとなっている。ちなみに従来のゼオライト機能紙は、500円/平方メートルだ。

今後、除染現場や全国での最終処分場への販売を強化し、2013年度に5億円の売上を目指していると同時に、さらなる「FS-ZEO」シリーズのラインアップ拡充を進め、商品力の強化を図るとしている。