映画監督の山田洋次氏が、文化の発達に関して顕著な功績のあった者に対して贈られる文化勲章を受賞したことが30日、明らかになった。

文化勲章を受賞した山田洋次監督

映画『東京家族』の南蛮特別試写会で京都に滞在中、受賞の一報を受けた山田監督。「京都で電話を受け、びっくりしました」と受賞の瞬間を話し、「映画人の一人として映画界を代表して日本映画のためにこの章を頂こう、という気持ちでお受けしました」と語った。代表作『男はつらいよ』の主人公・寅さんにちなんで、「寅さんは、『文化勲章って、それ何だい』『そんな立派なものもらってどうするんだい』『俺みたいな出来損ないの映画を作っていてそんな章を取るなんて』と冷やかしそうですね」と笑顔で話すと、「そして、渥美さんが生きていたら、きっと喜んでくれたでしょう」と振り返った。

また、山田監督は「松竹という土台があったので、作りたい作品があってそれを実現できる条件を与えられていました。常に作りたいものがありそれが50年間続いてきました」と50年の監督生活をたどり、「今も2本や3本作りたいものがあります。寅さんシリーズが終わった時、『これで終止符を打つか』とも思いましたが、でも寅さん以外の作品で作りたいものもいくつもあり、それを一つずつ実現しているうちに何年もたってしまったという感じです」とターニングポイントを明らかにした。「作りたいと思う、作ること自体が楽しい、面白い。作ることを楽しんでいると観客にとっても楽しい作品ができるだろう、そんなことを信じてやってきたつもりです」と制作意欲はわき続けているようだ。

映画『東京家族』 (C)2013「東京家族」製作委員会

山田監督の81作目となる最新作『東京家族』(2013年1月19日公開)は、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、妻夫木聡らが出演し、小津安二郎監督がかつて手掛けた同作をモチーフに作られた。今から50年前、当時の山田監督は小津作品に興味がなかったのだという。「古臭い映画だなと思っていました。まさか『東京物語』を下敷きにした映画を作るなんて想像もしていませんでした」と驚きつつも、「ある時期から小津作品を、すごい映画だと思うようになり、50年かけて『世界で一番の映画じゃないか』と思うようになった頃に、英国映画協会でも『東京物語』が世界一位に選ばれました」と敬意を表した。

本年度の文化勲章は、山田監督のほか、ノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった山中伸弥氏ら6人が受賞し、文化功労者には俳優の松本幸四郎、アニメーション映画監督の宮崎駿ら計15人が選ばれた。