「財布が軽ければ心は重い」――お金と心の関係を、そんなひと言で的確に表したのは、かの詩人ゲーテ。まさに、"言い得て妙"なこの言葉。食べ物や衣服、サービス、医療に至るまで、"豊かさをお金で買う"物質社会に生きる以上、お金に振り回されてしまうのは、ある意味仕方のないことだとも言えます。

しかし、そんななかでも着実に貯め続け、お金持ちへの階段をのぼった人には、ある種の共通ルールがあるようです。一代で財を成した億万長者の起業家から、収入は多くないけれどコツコツと貯め続けた会社員や主婦まで、多くのお金持ちを取材してきて感じるのは、自分なりの"お金のルール"を持ち合わせているということ。基準は、お隣さんではなく、「自分自身」。意志が強く、マイペースです。例えば、こんな3つのルール――。

(1)お金の使い方に"緩急"がある

お金を使わず、ひたすら貯めることに喜びを感じる人もいるものの、たいていは、"使うべきところ"と"引き締めるところ"のメリハリがはっきりしています。つまり、優先順位をしっかりつけてお金を使っているということ。

以前取材した貯蓄3,000万以上の40代のサラリーマン(年収700万円)は、「コンビニを使うのは年に2~3回」。飲み物は自分で作って家から持参したり、あらかじめ業務用スーパーでペットボトルをまとめ買い。昼のランチも、毎日手作り弁当が基本。忙しい時は、おにぎりや白飯を持参し、おかずだけ惣菜屋で購入するといった徹底ぶり。しかし、国内の城を巡るのが趣味だという彼は、月に2回は旅行へ行き、さらに年に1度は海外旅行を楽しむ。彼いわく、「やりたいことにお金を使っているから、他を引き締めるのが苦にならない」。メリハリをつけてお金を使うことは、ストレスの少ない節約術だといえるでしょう。

(2)目的意識を持って貯金をしている

貯め上手なお金持ちは、往々にしてモチベーションのコントロールが上手いもの。貯金をする時も、"不安だから""ただなんとなく"といったあいまいな理由ではなく、「マイホームを買うためにいくら貯める」「年間○○円貯める」という風に、明確な目標を設定するケースが多いのです。

例えば、世帯年収500万、3人の子どもがいながら2000万円以上を貯めた30代の主婦は、貯金を複数に分け、それぞれ「家族旅行用」「マイホーム用」「親孝行用」「趣味用」など、名称を設定。"何に使うか"をはっきりさせることで、モチベーションの維持につなげていたのが印象的でした。ポジティブで具体的な将来目標を設定して貯金に挑んでいるからこそ、それだけ節約も前向きにとらえられるものです。

(3)"人は人"と割り切れる

お金に対するマイルールを持っているから、"ブレない"。 「流行りだから」「人が持っているから」という理由で消費をしないのもひとつの特徴です。基準は"自分がどうしたいか"。30代前半にして約4000万円(月収30万円)を貯めた女性の生活費は「月10万円」。月収20万円時代から、生活レベルをほとんど上げていないという彼女。若い頃からコツコツと貯金し、投資にも積極的。攻めと守りで資産を増やし、貯蓄が4000万円を超えた今でも某衣料メーカーの製品を好み、光熱費の節約を日々意識。セールで安いものを見つけたり、友達とコストコへ行って食材をシェアする時間が楽しいと朗らかに笑います。その一方で、震災の時には100万円以上を寄付し、今でも月に数万円の寄付を続けているそう。

自分のマネースタイルが確立しているからこそ、お金の使い方にも迷いがない。世間に振り回されることもないわけです。

彼らに共通するのは、自分の心をうまくコントロールできているということ。強いメンタルを手に入れることが、お金持ちになるひとつの要素であることは間違いないようです。