Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは10月22日と23日、都内で同社ならびにパートナー企業の先端技術が一堂に会する開発者向けイベント「フリースケール・テクノロジー・フォーラム(FTF Japan 2012)」を開催している。

同イベントに併せて同社はスマートメーター向けARMマイコンとして、ワイヤレス・マイコン「Kinetis KW01」を発表した。

Freescale Semiconductorのメータリング、メディカル&コネクティビティ・ソリューション・ダイレクタのBruno Baylac氏

「世界全体でスマートグリッドへの取り組みが国家レベルで進められているが、その要因は3つある。1つ目は電力会社の発電、送電、配電などの電力の最適化。2つ目は将来におけるスマートグリッドとしての電気自動車(EV)/ハイブリッド自動車(HEV)と再生可能エネルギーの融合。そして3つ目として、電力の消費量をリアルタイムで見たり、時間帯別料金設定の効率活用による消費者側による電力料金の低減というメリット。また、スマートグリッドを推進するために米国では34億ドルの投資が決定しいているほか、欧州では2020年までにエネルギー消費量を20%削減しようとメッセージを出しているし、中国も100億ドル近い投資を進めている」とFreescale Semiconductorのメータリング、メディカル&コネクティビティ・ソリューション・ダイレクタのBruno Baylac氏は同社がスマートグリッドに注力する背景を語る。

こうした中、スマートグリッドが普及する鍵を握るのは屋内の各種機器、そして電力会社のデータセンターとの通信能力を持った「スマートメーター」だ。スマートメーターは2020年までに全世界で8億台(全世界には28億台の電力メーターがあると言われている)の導入が見込まれ、すでに米国や欧州の一部で導入が進められているほか、日本でも東京電力が2014年には導入するとしている。

スマートメーターは家庭内の電気機器と消費される電力量などのデータのやり取りをしたり、電力会社のデータセンターとそのデータをやり取りし、適切な電力需要の実現などに必要なものだが、そうした各所との接続は有線、もしくは何らかの無線規格によって実現される。同製品は、最大48MHz駆動のARM Cortex-M0+を搭載し、複数の変調方式(GFSK、MSK、GMSK、およびOOK)による最大600Kbpsの通信速度を実現できるほか、290~340MHz、424~510MHz、および862~1020MHzの周波数帯域をサポートしているため、日本、米国、欧州、中国、インド、ブラジル、メキシコをはじめとする各国のISMバンドに対応することが可能となっている。

また、多数のスマート・メータと単一のデータ収集ポイントを接続するネイバフッド・エリア・ネットワーク、および多数の街灯やセンサを接続するメトロポリタン・エリア・ネットワークなどの屋外アプリケーションに対して、独自プロトコルや業界標準のIEEE 802.15.4e/gプロトコルをサポートするほか、センサ、制御装置、ディスプレイ、家電製品、機械類をワイヤレスで接続する屋内アプリケーションに対しては、独自プロトコルや6LoWPAN、WMBUS(EN13757-4)、KNX、およびECHONETなどの標準プロトコルをサポートしている。

Kinetis KW01の概要。併せて発表されたKinetis Mシリーズとの使い分けは、Mシリーズは無線通信機能のない電力計測用マイコンであり、KW01は通信ユニットという形で無線機能を持たないスマートーメーターに取り付けて用いたり、次世代のスマートメーターに内蔵するなどして用いられる無線通信用マイコンということであった

同製品は、2012年第4四半期にサンプル出荷を、2013年第1四半期に量産を開始する予定だとするほか、Nivisとの協業によるメトロポリタン・エリア・ネットワーク(MAN)開発キット「TWR-METRO-KIT-NA/JA」の供給開始も併せてアナウンスしている。同キットは、6LoWPAN準拠のスマート・オブジェクト・ネットワークを面倒な設定なしに短時間で構築し、開発済みのハードウェアに組み込んで、実際の環境に即したネットワークの性能評価を行うことができるというもので、バッテリ駆動の2つの小型ワイヤレス・エンド・ノードおよびPCを接続するための1つのワイヤレス・エッジ・ルータを搭載している。エンド・ノードは最大20台まで容易に拡張することが可能で、各エンド・ノードは、ARM Cortex-M4コアをベースとするKinetis KシリーズおよびサブGHzスマート無線トランシーバ「MC12311」で構成されており、数マイルの距離ならRFパワー・アンプを追加せずに最大15dBm以上で送信する能力を備えているという。また、エッジ・ルータの中核は、Power Architectureテクノロジをベースとした通信プロセッサ「QorIQ P1025」で、Nivisのエッジ・ルータ・ソフトウェアを実行することが可能だという。なお、同キットは米国、カナダ、EU、日本での使用が認可されることが見込まれているという。

Nivisとの協業により提供されるメトロポリタン・エリア・ネットワーク(MAN)開発キット「TWR-METRO-KIT-NA/JA」

■フリースケール・テクノロジー・フォーラム(FTF関連記事)
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