すでに販売がスタートして1週間ほどが経過したAppleの第5世代iPod touch。マイナビニュースでもその製品レビューをお届けしているが、iFixitが恒例の分解レポートを行っているのでその要点をご紹介しよう。iPhone 5に類似したスペックながら、iPod touchはよりコストダウンに特化した技術が投入されており、ある意味でiPhoneよりもエンジニアリングの限界に挑戦した製品といえるかもしれない。

第5世代iPod touch

iFixitの分解レポートによれば、分解と修理という観点からいえば、30点ほどの評価だという。分解がしづらいうえに、個々の部品がひとまとめになっており、交換による修理は不可能ではないものの、非常に手間がかかり高くつくというのがその理由。とくに分解のしづらさは最初に本体のカバーを開ける時点で明白で、外部にネジ穴が露出していないため、まず本体とディスプレイ部をくっつけている接着剤を熱で融解させるところからスタートしなければならないという。その他のレポートの主なポイントは下記の通りだ。

  • 本体上部のカメラ+LEDフラッシュ+マイク+音量ボタン+電源ボタン、本体下部のLightningコネクタ+ヘッドホンジャック+マイクといった部分の部品やケーブルがすべて1つのユニット化されている。そのため個々の交換は不可能となっているものの、これによりコストダウンを図っているとみられる。

  • iPhone 5にみられたホームボタンの金属板追加による強化は第5世代iPod touchには見られない。このため、iPhone 4/4S時代に問題となったホームボタンの"利き"が悪くなる現象は変わらず存在すると考えられる。

  • バッテリ容量は1,030mAhと、前世代の製品の930mAhに比べ1割ほど増加している。

  • 搭載するA5プロセッサには4Gb (512MB)のSK Hynix製Mobile DDR2 DRAMが搭載されている。なお、分解を行なったiPod touchの個体には256Gb (32GB)の東芝製NANDフラッシュが採用されていた。

  • 4インチスクリーンにRetina採用と、iPhone 5と画面サイズと解像度は同等。本体サイズも縦横はほぼiPhone 5と一緒で、厚みが6.1mmとiPhone 5の7.6mmに比べて薄くなっており、重量も88gと112gに比べて少なくなっている。つまりiPhone 5と比較して全体に2割ほど容積と重量が減っている形となる。

これらから明確にわかるのは、iPhone 5の基本スペックを踏襲しつつ、あとはいかに部品のモジュール化を進めてコストダウンを図るか――というのがiPod touchの設計思想だということ。一部を除いてネジなどは利用されておらず、個々の部品も接着剤で直接貼り合わせてあるなど、もはや分解しての交換修理は念頭に置いておらず、ハードウェア的に故障した段階で本体交換を前提としたものとなっているようだ。

またiPod touchに光量センサーが搭載されていない件についてAppleのPhil Schiller氏が「薄すぎて搭載できなかった」とコメントしている件にもあるように、iPod touchは薄さと詰め込みの面でギリギリの設計を行っており、もはやコストダウンの件と合わせてエンジニアリングの限界に挑戦しているような節さえある。コストバランスと高級感を目指したiPhoneと合わせ、この種のデバイスが設計のターニングポイントに到達しつつある感がある。