Freescale Semiconductorは、64ビットプロセッサ「QorIQ T1/T2」ファミリの拡充として、ギガビットイーサネットスイッチを統合した64ビット組み込みプロセッサであるルータオンチップのクアッドコア「T1040」など4品種を発表した。

同製品群は、Power Architectureテクノロジをベースとしており、エントリレベルからミッドレンジのネットワーク/プリンタ/セキュリティ機器アプリケーションをターゲットにしている。また、「T1」ファミリのデュアルコア/クアッドコアと「T2」ファミリの仮想8コアデバイスで、デュアル1.2GHzから8コア1.8GHzまでの幅広い性能レンジをサポート。「T1040」に加えて発表された製品は、2つのコアと1つのEthernetスイッチを統合した「T1020」、デュアルコアの「T1022」、Power Architecture e6500コアをベースとする仮想8コアの「T2081」で、すべてピン互換性を備えている。

「T1/T2」ファミリは、CoreNetやPCI Express、イーサネットといったネットワークインタフェースに加え、固定機能とネットワークのオフロードを拡張した独自のデータパスアクセラレーションアーキテクチャ(DPAA)を含むプログラマブル処理ユニットと固定処理ユニットの組み合わせ、および高性能なパターンマッチング/セキュリティ機能を統合する。インテリジェントな統合性と先進的な設計/プロセス技術により、最適化された性能と拡張性を実現し、柔軟な電力調整を通じて優れたエネルギー効率の設計が可能となる。

8ポートの内蔵ギガビットイーサネットスイッチに加え、「T1040/T1020」は、DPAAエンジンおよび多様なプロトコルセットをサポートするQUICC Engineブロック、共有仮想化技術、次世代セキュリティ機能など、すでに発表済みの「T1042」の機能や特性をすべて備えている。1.2~1.4GHzの性能をサポートし、高性能な電力管理システムは、エネルギー効率に優れたファンレス設計を可能にするディープスリープモードを備える。また、優れた低消費電力性能を実現し、全体的なシステムコストと消費電力を抑えつつ、設計を簡素化するため、低価格ルータに最適となっている。

さらに主要なタスクをスイッチ側にオフロードすることで、CPUを他のタスクに専念させることができるため、同社の現行世代の「QorIQ P1」プロセッサに比べて、同等レベルの消費電力で2~4倍の性能を発揮することが可能。ターゲットアプリケーションとしては、エンタープライズ/サービスプロバイダ向けのスイッチ/ルータ機器、セキュリティアプライアンス、ファクトリオートメーションやスマートグリッド向けの産業ネットワーク製品などを想定しているという。

デュアルコアの「T1022」は、同社の現行世代の「QorIQ P1/P2」デバイスと比べて、同等レベルの消費電力で2~4倍の性能とSerDes帯域幅を実現する。エンタープライズ向けのスイッチ/ルータ機器、セキュリティアプライアンス、ファクトリオートメーションネットワーク製品など、消費電力制約の厳しい様々なアプリケーションに最適だという。

そして「T2081」は、最大1.8GHzで動作する4つのデュアルスレッド対応Power Architecture e6500コアを統合しており、同社のミッドレンジの45nm「QorIQ P」シリーズと比べて、2倍以上のコア性能とキャッシュサイズ、SerDes帯域幅、イーサネット接続性を備えつつ、消費電力は同等レベルに抑えられている。特徴としては、仮想化技術や多様なI/Oオプション、DPAA、堅牢なセキュリティ機能などを備えている。e6500コアのデュアルスレッド技術により、シングルスレッドの場合に比べて1.7倍の性能を実現し、搭載された128ビットAltiVec SIMD(Single Instruction Multiple Data)ベクタプロセッサにより、メディアアクセラレーションやレーダ処理など、従来はDSPが処理していた演算を、より少ない消費電力で実行することが可能だ。コントロールプレーンやコントロール/データ統合プレーンの処理向けに設計されており、ターゲットアプリケーションとしては、モバイルバックホール機器、LTE/WCDMAチャネルカード、コントロールカード/NIC、試験/計測製品などを想定しているという。

このほか、厳しい電力制約要件を満たすため、T1/T2ファミリでは、複数の電力モードを動的に切り替えるパワースイッチを使用して、コアや様々な処理ユニットの電源を個々に独立して制御し、消費電力を最適化することが可能。このアプローチには、ディープスリープモードやスタンバイモードも組み込まれており、ネットワークからの復帰要求に対する高速応答を維持しながら、0.5W未満の低消費電力を実現することが可能だという。

また、欧州行動規範(EU Code of Conduct)やENERGY STAR(SNE)などの省エネ規格に準拠するよう設計されたデバイスアーキテクチャと28nmプロセスの組み合わせにより、ファンレスの対流冷却システムの設計が可能となるほか、e5500コアは、ナップ/ドーズ/スリープ低消費電力モードにより、システムのエネルギー使用を抑えることが可能で、パケットロスレスディープスリープはECMA 363ベースの自動応答をサポートする。

なおT1040は、2013年第3四半期にサンプル出荷を開始し、残りの製品も順次出荷を開始する予定。また、リアルタイムOSと開発ツールサポートが、ENEA、Green Hills Software、Mentor Graphics、Wind Riverなどのパートナー各社より提供される予定のほか、Freescaleからは、Linux BSP、リファレンスデザインボード、マルチサービスルータリファレンスデザイン、セキュリティアプライアンスリファレンスデザイン、CodeWarriorデバッグツール、設定ツール、各種モデルなどの開発ツールが提供される。